はじめに
今回の記事は【小さな菜園づくり】。約60㎡の小さな空間を舞台に、動植物が多様で、かつ収量の多い菜園を作り上げる過程を記していく連載です。
2024年の夏作ではトウモロコシ・つるありインゲン・カボチャの混植に挑戦してみることにしました。ということで、これら3種の混植によって期待できる効果や、今回自分が実践した栽培方法を具体的に紹介してみます。
また5月中旬は植物の勢いがグッと増し、収穫や成長が楽しみなシーズン。混植に挑戦した他にも、スナップエンドウの収穫・既に種まきした面々の成長観察も行なったので、ついでにその様子も載せてみますね。
この日の気候と暦
この日はゆっくりと朝の10時頃から作業をスタートしたんですが、どうやら5月中旬の暑さをナメくさっていたみたいで、10時など既に酷暑。数十分も作業を進めれば汗ダラダラになってしまったので、次回は早起きを決意したのでした。つい数日前まで、もう5月の中旬なのに最低気温が12~13℃まで冷え込んでたのにな。なかなかの不安定な天候が続きますが、なんとかなるの精神で突き進みます。
この5月19日は小満の前日。ありとあらゆる生き物が勢いよく成長し、地球が生命力に満ちている時期です。菜園やその周囲を見渡すと、ひととき前よりも草の勢いが明らかに増していて、どこからか侵食してきた笹が天に向かってひたむきに伸びていて、夜は一晩中カエルの大合唱で。賑やかな季節だな。

トウモロコシ・つるありインゲン・カボチャの混植(The Three Sisters)
これら3種の混植から期待できる効果
2024年の菜園ではコンパニオンプランツの考え方を最大限に取り入れた作付計画を行なっているのですが、その代表格とも言えるのが “The Three Sisters” とも呼ばれるトウモロコシ・つるありインゲン・カボチャの混植。北米先住民の伝統的コンパニオンプランツによる集約的菜園です(パーマカルチャー菜園入門 2010)。
野菜の伝統品種やハーブ、更には民族植物学的な有用植物の種子を扱っているMagic Garden Seedsというヨーロッパのサイトがありますが、なんと面白いことに “The Three Sisters” という商品名でこれら3品目の種子がキットで販売されていたりして。その商品の概要欄に “The Three Sisters” の詳しい説明が載っていたので、ちょちょいと意訳してみます。
スイートコーン・インゲン・カボチャは理想的なコンパニオンプランツで、最も有名な混植栽培システムでもあります。
Magic Garden Seeds / The Three Sisters
その仕組みは、スイートコーンはインゲンがつるで上によじ登っていくための支柱となり、そしてインゲンは窒素を固定することで土壌を肥沃にし、より多くの栄養素を要求するスイートコーンをサポートしています。大きな葉を持つカボチャは地表を覆って日陰を作り出し、地表の水分やCO2濃度を保つのに役立っており、この組み合わせもやはり天然肥料として機能しています。
このような混色栽培の中で、それぞれの植物が互いに恩恵を与え合うという原理はとても古くから理解されていて、もしかするとそれはマヤ文明からもたらされた可能性もあります。これら3種の伝統的な組み合わせは”The Three Sisters”と名付けられています。
このように、トウモロコシ・つるありインゲン・カボチャの混植栽培は、アメリカ大陸においてかなり古くから実践されてきた歴史ある栽培システムであることが分かります。
個人的には「カボチャは地表を覆って日陰を作り出し、地表の水分やCO2濃度を保つのに役立っており、この組み合わせもやはり天然肥料として機能しています。」との文章を読んで、「地表に水分とCO2が保たれていたら肥料としての効果があるの?」と驚きというか疑問というかを感じたので、このことは自分でも深掘りして調べてみようと思いました。
それにしてもこの混植システム、初めて知った時は「めっちゃ頭いいやん!!!」って感動した記憶があります。上の説明では機能的な説明がメインになされていますが、背の高いトウモロコシを立て、それを支柱につるありインゲンを上に登らせ、余った地表のスペースにはカボチャを這わせる、という空間的なスペースの使い方も天才的。自分の菜園でビシッと一発で上手くいくのか、それとも改善点が見つかるのかは未知数ですが、実際に実践できていることが楽しくてたまりません。
畝立てと種まき
The Three Sisters についての座学はこれくらいにして、お次は作業風景へと移ります。
◎畝立て
まずは畝立て。写真撮るのを忘れていましたが、高さ約10cmの平畝で、畝幅は約80cmにしました。さっきの引用のように、地面を這うカボチャが地表の水分を保ったり地表に陰を落として雑草を抑止するなどマルチの代わりとなる(はず)なので、畝にビニールマルチは張りませんでした。
◎種まき
畝を立てたところで、最後にトウモロコシ・つるありインゲン・カボチャの種まきを行ないました。自分は自家採種までを念頭においた自然栽培スタイルなので種子を直播していますが、苗を植え付けてもいいと思います。
使った品種は以下の通りです。
トウモロコシ:黄もちトウモロコシ
つるありインゲン:虎丸うずら(とらまるうずら)、高原秋縞(こうげんあきしま)
カボチャ:神田小菊(かんだこぎく)
今回実践してみた The Three Sisters の植え方は以下の通り。文章だけでは伝わりづらいので、図も付け加えています!
トウモロコシ・・・株間30cm、条間50cmの2条、1ヶ所あたり3粒の点播き。
つるありインゲン・・・株間30cm、条間50cmの2条、1ヶ所あたり3粒の点播き。トウモロコシの間に。
カボチャ・・・株間90cm、1条、1ヶ所あたり3粒の点播き。


スナップエンドウの収穫
The Three Sisters の仕込みを終えたところで、お次はスナップエンドウの収穫です。
2024年2月18日に種を播いて、本日5月19日に晴れて初収穫を迎えました!

で、いきなりだけど「収穫適期って具体的にどのくらいのサイズなんだろう?」と気になって、今回用いたスナップエンドウの種子袋を見ると「莢の長さが7.5cm、幅が1.7cmに達したタイミングが収穫適期です」みたいに何とも絶妙な数字が記載してありました。「中途半端にチマチマ数字刻むなよ!」ってつっこみたくなるw
けれどもやっぱり収穫適期はしっかり押さえておきたいから実際に莢の長さを測ってみたら、長さは8.0cmくらいと全然OKでしたが、幅は1.2cmくらいのものが多く、記載してあった収穫基準には絶妙に達せず。とはいえ次に菜園を訪れるのは1週間後の予定で、その頃には優に収穫適期を超えそうなので、ある程度長さのあるものは今回でほとんど収穫しました。本当は毎日こまめに収穫する野菜だよな、こいつは。
で、お次は「収穫適期って何日間ぐらい続くのかな?」と気になって調べてみると
収穫適期はそれぞれ短く、約2~5日しかない。収穫が早すぎると莢または子実の肥大が不足で、収量が少なく、風味も足りない。遅すぎる莢も子実も固くなって、風味や味が損なわれる。収穫期になったら、毎日圃場を巡回して、収穫適期になっている莢を順次に収穫する。
BSI生物科学研究所 実用作物栽培学 エンドウ
とのことで、収穫適期がかなり短いので本来は頻繁に収穫してあげたいところですが、自分の場合なかなかそうはいかず。
けど今回収穫したスナップエンドウ、さっと茹でて天日塩をぱらっと振りかけて齧ったら超美味かった! 収穫した時は莢がちょっと未熟かなーと思ったけど、けっこうタイミングバッチリだったみたい!
他の作物たちの成長観察
お次は、既に種まきを終えている作物たちの成長観察です。写真を交えながら簡単に報告していきます!
2月に植えた2種のジャガイモ
「アンデスレッド」と「名前忘れた」の2品種を植えています。
「アンデスレッド」については、最近の気温の上昇とともに次第に葉が黄色っぽく変色してきました。しかし茎葉はまだしっかりと直立していて枯れている様子はなく、収穫まではあと1~2週間ぐらいかな、といったところ。
「名前忘れた」については、まだまだ葉色の変色さえも見られず。収穫まで2~3週間くらいはかかるのかな、といった印象。
ジャガイモに関してですが、どちらの品種も2024年2月18日と適期に植え付けできていて、5月中には収穫できるものだろうと踏んでいましたが、この様子だと収穫は6月に突入してからになりそう。意外と時間かかるんだなーという印象です。「ジャガイモ収穫 → 夏野菜の種まき」の流れで栽培する予定ですが、このままだと夏野菜の収穫が遅くなっちゃいそう。ここら辺の切り替えがまだまだ難しい。

ときわ地這きゅうり

発芽成功!!! 2024年5月4日に播種していました。
ただし種まきした場所によっては、1ヶ所あたり3粒を点播きしたのに子葉が1本しか出ていなかったり、もしくは生育途中で枯れてしまって1本しか残っていなかったり、はたまた出てきた苗のサイズが明らかに小さかったりと心配要素はありますが、特に初期の除草をしっかりするなどして乗り越えさせてあげたいところ。
ダビデの星(オクラ)

これも発芽成功!!! 2024年5月4日に播種していました。個人的に夏野菜でいちばん楽しみにしている品種です。
ただしこちらも種まきした場所によっては、1ヶ所あたり3粒を点播きしたのに子葉が1本しか出ていなかったり、もしくは生育途中で枯れてしまって1本しか残っていなかったりしたので、初期の管理をしっかりしながら大きく成長させたいところ。
チャービル・翡翠ナス

翡翠ナス、発芽成功!!! 2024年5月4日に播種していました。まだまだ弱々しいけど。
ただし5ヶ所に種まきしたはずでしたが、子葉が出てきているのはそのうち3ヶ所のみ。残る2ヶ所ですが、このまま発芽しなかったら追い播きの必要がありそうです。
また翡翠ナスと同じ畝に植えているチャービルについては、ちゃんと発芽はしているのですが、株のサイズが全く大きくならず。ナスとチャービルで混植して、チャービルは地を張うように成長してマルチ代わりになる予定でしたが、今回は頓挫。翡翠ナスにがんばってもらいましょう。
チャービルが上手くいかなかった原因としては
・そもそもチャービルが菜園の環境に合っていない(pHや栄養素などといった、土壌の問題)。
・チャービルはあまり陽が当たらず湿り気のある場所を好むが、今回植えた場所は陽が当たりすぎている (実際に軽い葉焼けが見られる)。
がパッと思い浮かびました。
ハーブの種子あるあるで、種子が袋に有り余るほど入っていてまだたくさん残っているので、チャービルに関してもっと深く勉強しながら、来シーズンは植え付けの場所を変えてみたり、それでも上手くいかなかったら鉢植えで楽しんでみたりと、試行錯誤していこうと思います。
ちなみにこのチャービル、実はこっそり鉢植えでも栽培しているのですが、4月の上旬に種まきして、今の時期になって下葉をどんどん収穫できるくらいの大きさに成長してきました。試しに鯛のムニエルに添えて食べてみるとばり美味! 地植えでも上手に栽培できるようになりたいな。

大葉ニラ・伊勢ピーマン

大葉ニラ、発芽成功!!! 2024年5月4日に播種していました。ただし伊勢ピーマンは発芽している様子はありませんでした。
先ほどの翡翠ナスといい、この伊勢ピーマンといい、ナス科の植物は他の科の植物よりも発芽までのスピードや初期成長のスピードが少し遅いような気がします。やっぱり要求する地温が比較的高いからなのかな?
参考にした情報
設楽清和, 2010. 自然のしくみをいかす家庭菜園 パーマカルチャー菜園入門. 社団法人 家の光協会, 東京, 159pp.

Magic Garden Seeds / The Three Sisters – Seed kit gift box (2024年5月)
https://www.magicgardenseeds.com/The-Three-Sisters-Seed-kit-gift-box
BSI生物科学研究所, 2023. 「実用作物栽培学」エンドウ.
https://bsikagaku.jp/cultivation/peas.pdf
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