天下巡礼 2018年タイ編
サイトを見に来てくれたみなさま、こんにちは!
MELIAMANNA(メリアマナ)代表の有吉です。
MELIAMANNAとは、大学院で植物学について学んだ代表が、衣食住に植物を取り入れた暮らしを追求すことをテーマとして活動しているサイトです。
今回の記事は【天下巡礼 2018年タイ編 vol.4】。
この【天下巡礼】と題したシリーズは、MELIAMANNA(メリアマナ)の自己紹介という記事の続きとして、自分というものを大きく構成している旅の経験について大きく掘り下げてみる試みです。
前回の記事【天下巡礼 2018年タイ編 vol.3】パーイでは、旅の目的地だったパーイの町を目指して、チェンマイからミニバンに乗り込み”ゲロカーブ”と呼ばれる過酷な山道を越えた時の話や、理想郷のようなパーイの町で、人生で初めて「沈没したい」と感じた時の様子について、パソコンの奥に眠っていた当時の旅行記を掘り起こしながら書いてみました。
vol.4の今回は、引き続きパーイの町でゆっくりとした時の流れに身を任せながら過ごした時のことや、こんなタイ北部の僻地で日本人の旅人と友達になった時のお話です。
前回と同じく、分かりにくくて伝わりづらい箇所についてはカッコ書きで補足を加えておくことにしますね。
それでは【天下巡礼 2018年タイ編 vol.4】続・パーイ、スタートです!
パーイでの、もの思う一日 (2018/03/11)
パーイで迎える最初の朝。
昨日の夜飯と空気が旨かったせいか、最高の目覚めだった。今泊まっている部屋に置いてある4つのベットは結局俺しか使わずに、ゲストハウス一部屋貸切状態。こんな状況なんてほんとうに珍しいことだと思うけど、これはこれで何も気を遣う必要がなくて気楽でいい。しかもベッドは蚊帳付きで、チェンマイの宿とは違って超安心して眠りにつくことができた。ま、とりあえず今のゲストハウスは3泊分だけ予定しているけど(パーイには6日間滞在した)、もしこの場所に飽きたらコテージの宿にでも移って、ひとりでゆっくりしてもいいかもしれない。
東南アジアのか弱い水圧のポンコツシャワーを浴びてから、お腹が減ってきたことに気がつき、ゲストハウスに備えてあるちっこいバナナを食べてみる。日本のスーパーに並んでいるバナナは膨大な数の品種の中の氷山の一角だと聞いてはいたけど、そのウワサはどうやら本当みたいで、そこに置いてあったバナナは、モンキーバナナみたいなルックスではあるけど、かなり酸味の効いた不思議な味をしていた。しかもびっくり、スイカのタネぐらいの大きさの、丸っこい種が入っていた。日本のスーパーで見かけるものとは大違いで、かなり新鮮だった。
だがしかし、小ぶりなバナナを口にしただけではもちろん物足りず、なんとなーーく良さそうなカフェの中に座り込み、お腹を満たしにかかる。さすがは東南アジア!といったところで、オーダーしたマンゴーシェイクが絶品だった。目が飛び出るほど美味かった。この時、俺の目はほんとに少し飛び出ていたと思う。郷に入りては郷に従えで、食べ物でも飲み物でも、やっぱり地元のものが一番だなー。
そしてこんな異国の辺鄙な土地まで赴いて未体験の食いもんを口に入れる瞬間のゾクゾク感がたまらないのであって、またその瞬間が好きで好きでしょうがなくて、旅に出ているということもある。
例えば産まれ故郷のような、ひとつの場所、もしくはひとつの国にずっと留まっていると、その土地が持っている文化・食べ物・生活習慣・そこからの景色なんかが自分にとっての当たり前になっていく。そんな、ひとつの場所のことしか知らない人間が、どこか新しい場所に踏み込んだ瞬間に六感を通して脳に入り込んでくる刺激は、脳味噌のストックの中にはどこにも見当たらずに、とっても新鮮に感じる。けれど、その新しかったはずの場所に居る時でさえも、すぐさま”慣れ”が襲ってきて、無感動で、たまらなく退屈だ、という感情に飲み込まれてしまうことがある。で、この時に無感動とか退屈を抱いてしまっている時は必ず、”慣れ” によって周囲のアレコレに対して心が反応しなくなっていて、それで、どうも生きている心地がしない、という状態になっている気がする。けれどそれに反して、自分にとって新しい方角へ舵を切れば切るほど、そして”慣れ” に対して反抗的になればなるほど、おそらく自分が心底求めている感覚に手先が触れそうだと感じる。
まあ要するに、今は色んな経験に対してチェリーを捨てていく時期なんだと思う。たとえその経験が、バナナの種類が日本と違う!とか、タイまで来て飲むマンゴーシェイクは美味い!とかそんな些細なことであったとしてもね。
朝食が済んでもこの後の予定はこれといって無かったから、居心地が素晴らしく良いカフェに留まり、日本からわざわざ持って来た小説を読みふけった。大の読書好きにとっては、「爽快な晴空」「おいしい飲み物」「喧騒のない空間」という3つの要素がとてつもなくハイレベルで揃ったこの土地は、天国としか言いようがない。
どの街でも、絶え間なくエンジンの音が聞こえてきていた国、タイ。しかしそんな中、パーイの裏路地に構えるカフェで聞こえてくるのは自然の音だけで、小説のページが進む進む。やっぱり都会から必死こいて逃れて来て正解だった。だいたい、バンコクのような騒々しい土地で本なんかゆっくり読んでられるかって話だ。
この日は、読書をしたり、ボケーっとしながら紅茶片手に川辺を散歩したりしていると、あっという間に夜の屋台の準備が始まる時間帯になっていた。
時間とは何とも不思議なもので、パーイではびっくりするほど時間がゆったりと流れているのに、その流れに無抵抗で逆らわずにいると、あっという間に時間は過ぎ去ってしまう。時間というものはまだまだ得体が知れない…。
陽が落ちると、昨日と同じように屋台を冷やかしまくった挙句、またまた美味い飯を食べることができて今日も大満足。大通りのセブンのちょうど真向かい辺りにあって、おっちゃんがノンストップで「パッタイ! タイフード! パッタイ! タイフード! (以下、気が狂いそうなほど永遠…)」って言ってる屋台のパッタイは唸るほど美味かったから、ぜひぜひ行ってみてほしい。
そして今日も、一日が終わろうとしていた。これまでの人生での、いわゆる”旅行”では常に行き先とか目的があったから、こんな風に1日中なんのあてもなく異国の田舎を歩き回るのはなんだか逆に新鮮で。目的なんか無くても全然幸せじゃんね!!
ゲストハウスに帰ると、確かアイルランドから来たって言ってい女性が新しく部屋にいた。「どんくらいここにいるの?」とか、「明日どこに行くの?」とか言葉を交わしてみると、バリバリ気さくで話しやすくて、この人がおんなじ部屋でよかった〜。けど、会話が進むにつれて相手の話すスピードは早くなる一方で、日本で暮らしている俺はいっとき音速英語に触れていなかったから、この人と部屋で会話した時は、タイに着いて以来一番神経を耳に集めて会話した。もっと早い英語に慣れないとな〜。それに話すスピードも、もっと早く流暢にしたいな〜。ああ〜〜ヤルコトイッパイダ〜。
明日の予定は全くないけど、明日に備えて寝る準備をする。また、読書するのに最高なカフェ探しでもしようかな。
タイの僻地で日本人と友達に (2018/03/12)
この日も昨日に引き続き何もすることがない、というか本当に何もする気が起きない。休日家にいる時はこんな気分になることはしょっちゅうあるんだけど、旅先でこんな気分になっちゃうなんて初めての経験で、自分でもびっくり。暇を極めまくって、なんとなーくパーイの観光地をググってみると、バイクに乗って少し走れば”パーキャニオン”と呼ばれるグランドキャニオンのミニチュア版?みたいな場所があるらしい。他にも、第二次世界大戦の際に建設されたメモリアルブリッジや、なんとびっくり、温泉まであるらしい。
けれど、今日はどうやってもバイクを借りる気になんかなれず、ましてや遠出なんてもってのほか。ただただボーーッとしながら本を読みたい。
パーイに到達してから早3日目。メインストリート沿いの景色にはずいぶん慣れてきて見飽きてしまったから、今日は宿から少し行ったところの小道に入って、町の裏の方へ向かって歩き出す。ただでさえ車やバイクが少ないパーイだけど、こんな裏側まで入ってしまうとバイクがたまに横を通り過ぎるぐらいで、あとは風が木の葉を揺らす音とか、名前のわからない鳥のさえずりとか、そのくらいしか聞こえてこない。人の話し声や物音さえも聞こえてこないから、異国にひとり取り残されているような、そんな感じがしてならない。けど、普段はうざったらしい雑音に埋もれて生きているんだから、たまにはこんな静寂の中でおもいっきし羽を伸ばさないとね。
バリバリ南国な雰囲気のゲストハウスやボロい平屋が並ぶ裏路地を進んで行くと、”Art In Chai”という名前の、こちらもバリバリ南国感溢れまくるカフェを発見。半端ないチャイティー好きにとってはその名前に反応せずにはいられずに、一瞬も迷わず敷居をまたぐ。ここはサンダルを脱いでから中に入るスタイルで、とってもリラックスできそう。
席に座って中の空間を見渡すと、昨日どこかのカフェで見かけた優しそうな西洋人がまた今日もパソコン広げてキーボートをカタカタやっている。ノマドだろうか、それともパーイに沈没しているんだろうか。そういえば、バンコクにもチェンマイにも、そしてこのパーイにも、いかにも沈没していそうな雰囲気を身にまとった人間をよく見かける。
メニューを見てみると、もちろんチャイティーがあったから、もちろんオーダー。少し間を置いてから出てきたチャイティーは、甘さ全開のスタバとかのそれとは違って、スパイスの気持ちいい刺激があって、美味しい。唸るほどの美味さ。パーイに滞在している間、ここに通いつめてやろうと心に決めた。
こんな天国のような空間に包まれているといっそう読書欲が湧き上がって来て、タイに来てからずっと読み進めている『知と愛』を、小さな木製の机の上で開く。
それから1時間弱くらい経ったタイミングで、いかにもジャパニーズ顔な女性2人がカフェの中に入って来た。だいたい旅先で日本人を見かけたら話しかけてみるものだけど、読書に夢中になっていたのもあり特に気にせずそのまま机に向かっていたら、しばらくするとあちらから声をかけてきてくれた! パーイに来てから3日目、周りにいる旅人のほとんどが欧米人で、日本人とは話をするどころか見かけてすらいなかった。というか、タイに来て以来まだ日本人とは話してなかった!! 表情には全然出てなかったと思うけど、かなり嬉しかった。母国語で会話できる幸せ!!
パーイという、タイの北部も北部な僻地のカフェで偶然出会ってしまった3人。話が盛り上がらないわけがなく、それから1時間くらい話し込んだと思う。相手は2人とも俺よりひと回りくらい上だったけど、超いい人たちで話やすくて、お互い持ってきていた一眼レフの話や、もちろん旅の話でも盛り上がった。そのうちの1人は西回りの世界一周の途中らしく、まだまだ始まったばっかりなんだってー!
それにしても、母国語で話すことってこんなにも安心することだったっけ? せっかくの旅だからと思って避けていたところもあるんだけど、一回ぐらい日本人宿にお邪魔してみても楽しいかもしれないな。2人が泊まっている宿には、もう一人男性の日本人がいるらしくて、みんなで一緒に夜ご飯を食べようという流れに。集合場所と時間を決めてから、とりあえずカフェは退散。結局、3時間ぐらい居たのかな? まあ、タイだからそこん所は気にしない。
超楽しみな気持ちでいっぱいになりながら、すっかりお気に入りになったゲストハウス近くの川沿いまで移動し、木製のベンチに腰を下ろして時間になるまで本の続きを読みふけった。
夕方、集合場所に決めていたバスステーション前で3人と落ち合った。まだ会っていなかったもう1人の日本人と自己紹介。なんと年が俺よりひとつ上で、めっちゃ近い! 大学もなんだか似通ったような学部に行っていて、すぐに仲良くなった。
それから通りのレストランに入って、みんなでタイ料理を囲んで語らい合った。タイに来てからというもの、周りの西洋人のマシンガントークに圧倒されてあまり人と深く喋れていなかったからか、バリバリ楽しかった。というか一人旅となると、普段喋るといったら、店の人や宿で部屋が一緒になった旅人ぐらいで、たまにこんなサプライズのような出会いがあったりすると超絶テンションが上がる。
あっという間に時間は流れてゆき、今日のところは解散することに。最後にパーイのマップを見ながら、明日一緒ににバイクで温泉にでも行ってみようという話に。やばい、流れが完璧すぎるなあ! ひとりじゃ絶対どこにも行かずにぼーっと読書していた可能性100%だからね。
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次回の記事は【天下巡礼 2018年タイ編 vol.5】再・バンコクです。2018年タイ編の最終章。
旅の最終日、ゆったりとしていたパーイの町から離れて一気に南下し、活気に満ちたバンコクに再び戻った時のお話。バンコクでしっかりと食い倒れております。