【天下巡礼 2018年タイ編 vol.3】パーイ

2023/05/30 2024/04/10 タイ

天下巡礼 2018年タイ編

サイトを見に来てくれたみなさま、こんにちは!
MELIAMANNA(メリアマナ)代表の有吉です。

MELIAMANNAとは、大学院で植物学について学んだ代表が、衣食住に植物を取り入れた暮らしを追求すことをテーマとして活動しているサイトです。


今回の記事は【天下巡礼 2018年タイ編 vol.3】

この【天下巡礼】と題したシリーズは、MELIAMANNA(メリアマナ)の自己紹介という記事の続きとして、自分というものを大きく構成している旅の経験について大きく掘り下げてみる試みです。

前回の記事【天下巡礼 2018年タイ編 vol.2】チェンマイでは、バンコクから寝台列車に乗ってグンと北上し、チェンマイの街に滞在した時の様子について、パソコンの奥に眠っていた当時の旅行記を掘り起こしながら書いてみました。チェンマイの街には、好きなところも、そうでないところも発見しつつ、結局は旅の出発前に予定していた通り、チェンマイからさらに北上してパーイという町を目指すことに。

ということでvol.3の今回は、チェンマイからパーイに行くまでの過酷なバス移動や、都会の喧騒からかけ離れて浮世離れしたパーイの町に降り立った時のお話です。

前回と同じく、分かりにくくて伝わりづらい箇所についてはカッコ書きで補足を加えておくことにしますね。

それでは【天下巡礼 2018年タイ編 vol.3】パーイ、スタートです!

チェンマイの美味しい朝 (2018/03/10 早朝)

予定キッチリ、7時に目が覚めた。今は、チェンマイ旧市街のすぐ近くにあるゲストハウス。昨日旧市街をくまなく歩き回ったせいか、めちゃくちゃよく眠れた。窓の向こうは快晴。今日ものんびりとした良い日になりそう。ふと腕や脚を見てみると、10箇所は余裕で超える蚊に刺された跡が…。昨日寝る時蚊がかなりいたけど、さすがにここまでとは思わんかった。タイランド恐るべし、次来るときはデング熱のワクチンでもぶち込んだ方がいいのか…?

3月なのに朝から余裕で20℃超えるなんてとんでもない! とは頭の中で思いながらも、何しろ腹が減ったから何か食べようと思って億劫な足取りでゲストハウスからふらっと踏み出した。5分ぐらい歩いたところで、市場みたいな場所で朝市をしているのを発見して、迷わず足を踏み入れてみる。市場の中を見渡すと、そこは50m四方くらいの場所で、地元の人たちがお肉やら、お惣菜やら、調味料やらを売っていて、ローカル感丸出しな雰囲気が相当好きだった。しかも、買い物に来ている人達も、ほとんどが地元の人間。実を言うと、バンコクもチェンマイもそこら中が西洋人だらけだったから、こんなにも現地人だけに囲まれた瞬間はタイに来てから初めてだったかもしれない。

この市場では、朝飯用に”カオニャオピン”って名前のついた、ちまきみたいな物体を買ってみた。それはココナッツで味付けしたもち米をバナナの皮で包んで蒸してある料理で、これが最っっっ高に美味くてたまらない。チェンマイでは、昨日の夜から食事に恵まれすぎて、幸せ。ココナッツの甘い香りを紅茶で流し込んだら、もう朝から死ぬほどテンション上がる!

飯が美味いと足取りが軽くなり、その勢いでササッとゲストハウスのチェックアウトを済ませ、パーイ行きのバスが出ているバスターミナルに向かう。ゲストハウス前の大通りで、慣れた手つきで流しのソンテウをとっ捕まえ、運転手のおっちゃんに行き先を告げる。

俺「I wanna go to the bus terminal!」
お「what?」
俺「I wanna go to the bus terminal!!」
お「what??」
俺「I wanna go to the bus terminal!!!」
お「whaaat???」

んんーー英語通じないのかなーと思いながら、しょうがなくポッケからスマホを引っ張り出し、Google Mapでバスターミナルの場所を見せると

お「Ohhh! Bus station!!」

はいはいはい! terminal じゃなくて station なら通じる感じね! オッケーそういうことよくあるよね!

こうして行き先が無事伝わったところで、交渉を済まし、ソンテウに飛び乗る。

チェンマイに来てからずっと思っていたけど、ソンテウがめっちゃかっこいい。小型トラックを改造したというあの独特のフォルムといい、「派手に事故ったんかな??」と思ってしまうほどのボッコボコのボディといい、グルルと唸りをあげるあのイカツいエンジン音といい….。

というか、こんなこと言ってると、19歳になった今でもだいぶ男の子を引きずっている気がしますね…。

マフラーが取れてるんじゃないかと思っちゃうほどの爆音を鳴らしながら、チェンマイの旧市街を突っ切り、バスターミナルに着いた。運転手のおっちゃんにお金を渡すと、本当に無垢な笑顔を返してくれた。1日に何十人何百人と人を乗せては降ろしての繰り返しのはずなのに、あんな笑顔を返せるなんて素敵だ。こっちまで幸せになってしまった。人柄は表情に出るよな。

バスターミナル…じゃなくてバスステーションの中をパーイ行きのチケット売り場を探しながらうろうろしたけど、どうしても見当たらない。見落としているのかと、中を2周ぐらいしてみたけど、やっぱり見当たらない。しっかりネットで調べたはずなのにな〜と思いながらインフォメーションに向かい、いかにもだるそうな様子の職員に尋ねてみると、売り場は今いる所とは道路ひとつ挟んだ向かい側の建物にあるらしい。つまり、バスステーションが道路を挟んで2つに分かれているってこと?? ややこしすぎてよくわかんない。道路まで出てみると、確かに道路を渡った向こう側にバスステーションがあって、かなり強烈になってきた日差しを受けながら、スタスタとそこに向かった。道路を渡って2つ目のバスステーションの奥の方に進むと、パーイ行きのチケット売り場はすぐに見つかり、早速チケットを購入。150THBと、道のりの長さを考えると破格の安さ! (今Google Mapで調べてみると、チェンマイからパーイまでは約130kmで3時間弱の道のり。円安な今現在のレートでも¥600だから、めっちゃ破格。)

結局、チケットを購入できたのはパーイ行きのミニバンが出発する9時半ごろ。だからはじめは、今から1時間後の10時半発のミニバンに乗るみたいな流れだったけど、売り場のお姉さんがなにやら9時半発のミニバンに俺を押し込むことを思いついたらしく、今にも出発しようかというそのミニバンの方に向かって連行され、そのままの流れでミニバンの荷台に俺の荷物が雑に放り込まれ、出発。かなり強引感があったけど、めちゃくちゃラッキー!旅ってこうじゃなくっちゃ。

チェンマイからパーイへ、過酷なバス移動 (2018/03/10 朝)

ミニバンがバスステーションを出発して、ビルやショッピングモールが建ち並ぶチェンマイの街中を走り抜けている中、昨日しっかり寝たはずなのになぜか眠ってしまっていた。ゲストハウスにたむろしていたクソ鬱陶しい蚊のせいで、眠りが浅かったんだろうか? 寝落ちしてから何分経ったのか分からないけど、目覚めると周囲にビルなんてこれっぽっちも見えなくなっていて、代わりに木造の民家がちらほらと見えるだけで、これからどうやら山道に入るみたいだった。いよいよ、噂のゲロカーブに突入しそうだ。

(当時、チェンマイからパーイへの行き方を調べるために何個かサイトを当たった時、カーブが連なる相当過酷な山道を、乗客のことなんか気にしないタイ人ドライバーが猛スピードで突っ切るもんだから、その道中は”ゲロカーブ”と表現されていた。「酔い止め必須」「いや、眠剤飲んで無理やり寝てた方がいい」「寝て起きたら隣の可愛いお姉さんがゲロ袋持ってた」みたいな怖ーくて面白ーい言葉のオンパレードだった記憶w)

ミニバンの中で何気に隣の席の人をふと見てみると、頭のてっぺんはハゲ、残った側頭部の髪を伸ばして左右でそれぞれ三つ編みにするという、これから死ぬまで二度と見ないであろう斬新な髪型をした西洋人の男性が座っていたw しかも年齢不詳。マジで、どうやったらあの髪型にたどり着くんだろうw

今向かっているパーイにはこんなおもしろそうな人がいっぱいいるのかな〜と未踏の地の雰囲気を妄想していると、その人と、目と目が合う瞬間、到来。

驚くほど澄んでいて、綺麗な目をしていた。
まるで、理想郷で産まれ、不安を知らなかった、赤子の頃の、名残があるような。

お互い微笑み合うと、パーイに滞在するのがとても楽しみになった。

やがて周りにあった木造の民家さえも見られなくなり、木々が生い茂る山の中に入ると、いよいよ地獄のカーブに突入。世界大戦の際に日本軍が作ったと言われているその山道は、蛇行に蛇行を重ね、ミニバンに乗っていると体が右へ左へ飛ばされ、落ち着いている隙なんてない。しかもUの字ほどの角度があるようなカーブもざらにあって、普段全く車酔いなんかしないのに、脳みそが揺らされまくって道の序盤から気分が悪くなった。”ゲロカーブ”なんていう縁起でもないような名前がついているのもバリバリ納得。

いちばん問題なのがミニバンの運転手で、かなり角度のついたカーブが連なる山道をかなりのスピードでぶっ飛ばす。後ろからメーターを覗いてみると、かなりの急カーブにも70~80キロぐらいのスピードで平気で突っ込んで行ってて、いつ事故ってもおかしくないw

しかしヒトの体に備わってる慣れっていうのは怖いもんで、そのスピードとスリル感に慣れてしまったら、最初感じていた恐怖はいつの間にか吹っ飛んでしまって(気持ち悪さは相変わらず)、座席から運転席の方に首を伸ばしてメーターを見ながら「いいぞもっと飛ばせ」だの、「お!100キロいった!」だのと思いながら、この状況をバリバリ楽しんでいる自分もいた。しかもよく見てみると、今激しく揺られているこのミニバン、マニュアルミッション!! この山道、このカーブ地獄を猛スピードでギアを激しく動かしながら突っ走る運転手は、もしかして世界でトップクラスのドライビングスキルを持ってるのかも!?

道中、他の大きなトラックがスリップして側溝にハマっていたのを横目に見つつ、パーイまでの道のりの半分ほどを猛スピードで走ったところで、ちっこいパーキングのような場所で途中休憩をとった。日本では絶対に体験できないほどのスピードを繰り出す乗り物を楽しんではいたものの、ゲロカーブの気持ち悪さは相変わらずで、パーキングでのんびりとラテなんか注文している西洋人が信じられなかったw

10分くらい休憩すると、すぐにまた山道を登り始めた。そしてまた、気が遠くなるほどのカーブの連続。途中で休憩せずにそのまま突っ切ってくれた方がよかったけど、まあいっか。まだゲロってないだけマシ、と自分に言い聞かせる。後々友達になった旅人に聞いたところによると、チェンマイからパーイまでの山道ではカーブが700個以上あるらしいw 気が遠くなるような数字だな。

ゲロらないように無理やり無心になりながら、激しく揺られること約3時間。12時半には、ようやくパーイにたどり着くことができた。やっとミニバンから解放されて心底ホッとしたけど、帰り道のことが一瞬脳裏をかすめ、またゲロりそうになった。

パーイ着、そこに天国はあった!(2018/03/10 お昼)

パーイの町並みや、そこからの景色を見渡してみる。

第一、山に囲まれていて空気が半端なく透き通っている。バンコク→チェンマイと、空気が黒ずんでいる都市を移動してきたから、入国して以来はじめて、これほど綺麗な空気を肺に吸い込んだ気がする。それに、メインストリートでもそれほど車が頻繁に行き来していない。バンコクでの、ぎゅうぎゅうの車をかき分けながら道路を渡るという行為も楽しいけれど、やっぱり車があまり通っていなくて落ち着いている場所が好きみたい。

パーイのバスステーションから予約しておいたゲストハウスに向かって歩いていると、見かける車の数は少ない代わりに、かなりの数のレンタルバイク屋がずらりと通りに並んでいた。そしてレンタルバイク屋の数と同じくらい、手や足に包帯を巻きつけた西洋人を多く見かけた。どう頭をひねってみても、バイクでぶっ飛ばして派手に転けたとしか考えられんw それに道を歩いているのはほとんどが西洋人で、ほんとは今ヨーロッパにいるんじゃないかと錯覚しそうになったけど、ちらほら目に入るタイ語の看板がどうにか、現在東南アジアにいるということを再確認させた。

バンコクからずいぶん北上したとは言っても、やっぱりここはタイランド。昼の気温は優に30℃を超える中、まだ慣れない地を、ゲストハウス目指してとぼとぼ歩いた。

パーイの町並みは、うまく言葉にできないけど今までに訪れたことのある場所とは似ても似つかない様子で、なんだか新鮮すぎて、しばらく時間が経つまでぼやけて見えているような、蜃気楼を見ているかのような印象があったのがずっと脳裏に焼き付いている。けどそれは、単に町並みが新鮮なんじゃなくて、パーイが持つオーラが新鮮だったんだと思う。

特に迷うことなく道1本で今日の宿泊先までたどり着き、チェックインを済ます。毎回毎回、宿のデポジットの存在を忘れてて「予約してた金額より多いじゃん!ぼったくってんのか!?おい!!」と思ってしまうクセを早く治したい。案内された部屋にはベッドが4つ並んでいて、ゲストハウスでは珍しく1段ベッドのみだった。今日その部屋には誰も泊まっていないらしくて、どうやら貸切状態らしい。超最高だ!!

重い荷物をベットのそばに下ろして、早速パーイの町を散策しに出かける。どこを眺めてみても、その視界の中には綺麗でオシャレなカフェが入り込んできて、ここは本当にあのきったねーバンコクと同じ国なのか?と疑ってしまう。そんな沢山のカフェは、どの店も個性溢れる素敵な空間で、全部制覇したくなるほど。四角の空間に囚われずに、無操作に机や椅子を並べているカフェとか、沢山の植物で空間が埋め尽くされているカフェとか。

そんな中から、まずは直感でビビッときたカフェで買った飲み物を片手に、メインストリートに沿って町の端の方へ歩いていくと、川辺にたどり着いた。こんな時代にこんな物がまだ存在しているのか!と驚いたけど、この川には竹製の橋が架かっていて、手すりを掴みながら恐る恐る足を乗せてみると、一歩踏み出すたんびにギシギシ音をたてるものだから、おもしろい。この竹の橋は何年保つんだろう?? みたいなことを考えてみる。

こんな風にここパーイでは、周りの風景からカフェのようなお店まで、ありとあらゆる場所が自然やアートで溢れかえっていて、マイナスイオンを吸い込んでいないと死んでしまいそうになる俺にとっては、700個のカーブを有する道のりを、ゲロ寸前の状態でパーイまで越えてきた価値は大ありだった!!

それから日が暮れるまでは特に何もすることがなかったから、川のすぐそばで見つけた木製ベンチでひたすら本を読みふけった。聞こえてくる音といったら、水の流れていく音と、向こう岸のカフェから細々と聞こえてくる喋り声くらいで、この地に沈没したいと本気で思った。

日が落ちてくると、次第にメインストリートに屋台が並びはじめ、それにつられて人が大勢わさわさと集まってきて、やがて盛り上がりは最高潮に達した。屋台に並んでいたのは、パッタイみたいな基本のタイ料理から、ガイヤーン、春巻き、そしてなんと寿司まであって、みんな自由だなーと思いながら屋台の群れを眺めた。

ここでちょいと余談だけど、何か料理の名前をいきなり英語で言わなきゃいけない場面に出くわすと、誰しもフリーーーズしちゃうと思う。アタマ真っ白!になる瞬間。俺には今回その瞬間が、屋台で「春巻き食いてーなー」と思ったタイミングで唐突にやってきた。春巻きを英語で何て言うかなんて、もちろん生まれてからこのかた気にしたこともない。学校でも、塾でも、これまでに見た映画でも、春巻きの英単語は登場しなかった。けどその屋台を見てみると一安心、そこには英語のメニューが掛けてあって興味津々で”春巻き”っぽい英単語を探してみると、そこには”spring roll”と書いてあって、そのまますぎて内心めちゃくちゃ爆笑してしまったw springは春で、rollは巻きで、それをひょいとくっつけたら”春巻き”になるもんな。というかそもそも、春巻きはどうして春巻きって言うんだ??

そんな春巻きの肝心の味はというと、これも半端なく美味〜〜で、もちろん基本の春雨が入ったような春巻きから、タイらしくトムヤム味だったり、豆腐が入っていたり、カレーペーストが入っていたりと、もう何が何だかよくわからないけど全部美味しかった。こんな風に、わけわからん土地のわけわからん屋台でわけわからん飯を食うのが楽しすぎて楽しすぎて、これもあって、みんな旅にのめり込んでいくんだと思う。これからの旅でも、2度とたどり着けないようなわけわからん屋台でわけわからん飯をいっぱい食べれたらいいなあ。

思う存分屋台を冷やかし、お腹いっぱいになったところでゲストハウスに戻る。部屋に戻ってみても誰もいなくて、やっぱり今日は一部屋貸切みたい。

明日は何をしようかと考えるけど、何も思いつかない。たぶん明日も、そこらへんをうろつくうちに、日が暮れてしまいそう。

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次回の記事は【天下巡礼 2018年タイ編 vol.4】続・パーイです。

理想郷かと思えるほどの魅力を持つパーイで、ゆっくりとした時の流れに身を任せ、のんびりと過ごした時のことや、こんなタイ北部の僻地で日本人の旅人と友達になった時のお話です。

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