もくじ
はじめに
サイトを見に来てくれたみなさん、こんにちは!
MELIAMANNA(メリアマナ)代表の有吉です。
MELIAMANNAとは、大学院で植物を学んだ代表が”衣食住”に植物を取り入れた暮らしを楽しみ、探求することをテーマとして活動しているサイトです。
今回の記事は、空薫(そらだき)で樹脂香を楽しむための方法について。
………と聞いてパッと情景がイメージできた方も、頭の中にハテナがたくさん浮かんだ方もいると思いますが、つまりは「世界の片隅には空薫というお香の楽しみ方もあるんだぜ」というのを伝えてみる試み。また当初を思い返すと、樹脂香を手に入れてみたはいいもののマイナーな世界すぎるが故、楽しみ方が分からずにググりまくった記憶があるので、ここで詳しく方法をまとめておこうという試みでもあります。
「お香」と聞くと、スティックやコーンのお香にシュボッと火をつけて、香立てから香りが燻る時間を楽しむというのがポピュラーかと思います。ナグチャンパとか、HEMのチャンダンとか、めっちゃ良いですよね。もちろんヘヴィーユーザーな僕です。また「香りを楽しむ」という大きな枠でくくれば、アロマオイルの香りをディフューザーやアロマポットで楽しんだりとか、そんな情景も浮かんでくるのかもしれません。
だがしかし、お香の世界はまーだまだまだ奥が深く、奥へと進んだ一角には「樹脂香」というお部屋も存在するのです。
ということで今回は、そんな樹脂香のお部屋をご案内するべく
・まずは言葉を理解してみる (樹脂香と空薫について)
・空薫で樹脂香を楽しむ時に用意するもの
・香りを楽しむまでの詳しい手順
という三段構成でお話を進めていこうと思いますので、よろしくお願いします〜!
まずは言葉を理解してみる
まずは「樹脂香」や「空薫」という言葉について。
お香ジャンキーでもない限りは日常生活で聞き馴染みなどあるわけがないので、事始めに言葉の意味を理解してみましょう。
樹脂香
「樹脂香」というのはその名の通り、植物から採取した樹脂の塊を、お香として用いるときに使用される言葉です。
以上。
もう少し深掘りするべく『香 (Wikipedia)』を覗いてみると、このような記載がありました。
歴史
*1 (太字は記事筆者)
香の歴史はかなり古く、古代のオリエント世界では乳香、没薬などの薫香が盛んに用いられた。紀元前3000年前のメソポタミア文明ではシダーが香木として称えられ、古代エジプトではキフィと呼ばれる調合した香が重要な輸出品となっていた。
原料
種類は多く、白檀、丁香などのように樹木の皮、葉、根などの粉末や、乳香、安息香など、芳香のある樹脂や麝香、竜涎香など動物性のものがあり、ふつう香木(明香)と練香(煉香、合香)とに分けられる。
ここで太字をつけた乳香(フランキンセンス)、没薬(ミルラ)、安息香(ベンゾイン)は樹脂香に分類されるのですが、これらは古代より香として人類に利用されてきたことが分かります。
というか、古代って具体的にはいつ頃なんだろうか?
また、古代における樹脂香の利用方法は?
現代とさほど変わらない? それとも何か違いがある?
ここらへんの疑問は、文献などをあたりながら今後更に知識を深めていきたいところです。
空薫(そらだき)
そらだき【空薫・空烓】
*2
どこから匂うかわからないように香をたきくゆらすこと。また、その香り。
本棚の国語辞典を開いてみると、このようになんとも抽象的で辞書らしくない表現がなされていましたが、つまりは部屋の空間に香りを漂わせ、それを楽しむ行為のことです。
このように聞くと「スティックやコーンのお香、ディフューザーやアロマポットなども空薫になるんじゃないの?」と思ってしまいそうですが、もう少し具体的な僕の解釈では、「お香の中でも特に香木・樹脂香・練香・印香を用いて、それらを炭で熱した灰の上に置き、香を薫く方法」というのが空薫です。たぶん合っている。
そして具体的な空薫の方法については、次のセクションで解説してみますね!
用意するもの
空薫で樹脂香を楽しむためにあたって用意するものは以下の5つ。
お仏壇でお線香を焚く時の応用版みたいな感じですね。相当モノにこだわるわけでなければ、トータルしても5〜6千円くらいで収まると思います〜。また、マッチやライターは家にある前提で話を進めておきます。
香炉
まず初めに、どこからともなく香炉(こうろ)を手に入れます。
香炉とは、香を薫く際に用いる容器のこと。お仏壇でお線香を差し込むアレです。金ピカピンな蓮の花が刻まれた「THE 仏壇用」みたいな香炉を使ってみても構わないとは思いますが(?)、お部屋の中があまりにも仏壇味を帯びてしまいそうなので、樹脂香などを楽しむ用途でひとつお気に入りを手に入れるのがベターでしょうか。
材質は、金属・陶器・木材など (使用される金属や木材の種類については、まだ詳しくありません…)。サイズ感は、手のひらにポンと乗るぐらいのサイズがあれば十分です。お値段は、約2千円〜ウン万円まで。工芸品の世界ですね。
香炉灰
お次に手に入れるべきは、香炉灰(こうろはい)。
香炉の中に香炉灰を敷き詰め、その上で後述の香炭(こうたん)や、樹脂香を使用します。こうして灰を使うのも、お線香を焚く時と変わりありませんね。
仏具店にて、ビール1本分くらいのお値段でゲットできます。
香炭
手に入れるべき3つ目のものは、香炭(こうたん)。
先ほど、空薫とは「お香を炭で熱した灰の上に置き、香を薫く方法」と説明しましたが、ここで登場した炭というのが香炭のこと。言うなれば、お焼香の要領に近いでしょうか。
しかしお焼香と空薫は微妙に異なり、お焼香は粉末状の香を香炭の上に直接落としますが、それに対して空薫は、火を灯した香炭で香炉灰を熱し、熱を帯びた香炉灰で樹脂香を薫くという間接的な方法をとります(けれど香炭に直接乗せちゃう場合もあるみたい)。
お値段は内容量にもよりますが、数百円〜千円ほど。いつもネットで購入しています。
ピンセット / 火箸
手に入れるべき4つ目のものは、ピンセットもしくは火箸。
空薫の際には、火をつけた香炭を持ったり、時には香炉灰の中に埋めたりするので、香炭を扱うためのピンセットや火箸が必要です。100均のやつで構いません。
樹脂香
さて、最後に手に入れるべきは、当たり前ですが樹脂香。
乳香(フランキンセンス)・没薬(ミルラ)・安息香(ベンゾイン)が樹脂香の代表格ですね。まずはこの3種類から始めてみるのがいいでしょう。樹脂香の世界の扉を開けるためにも、入手のし易さ的にも。また空薫では樹脂香のみならず、沈香・白檀などといった香木や、練香、印香も利用することができます。
入手先は、お香の専門店やネットなど。選択肢が無限にあるのはもちろんネットですが、専門店では店員さんとの深い会話ができるのでとても楽しい。お値段は、質や量に大きく左右されるので何とも言えませぬ。
香りを楽しむまでの詳しい手順
ここからはいよいよ最後のセクション。空薫に必要な道具が揃ったところで、香りを楽しむまでの手順についてビジュアルメインで解説していきますね。
香炉に香炉灰を敷き詰める
香炉の容量に対し、8割くらいの香炉灰を敷き詰めます。
香炭に火を灯す
マッチやライターで香炭に火を灯し、火が安定するまで静観します。
香炭で香炉灰を加熱する
火が回った香炭の半身、あるいは全身を香炉灰の中に潜らせることで、上に被さった香炉灰を加熱します。
ポイントは、事前に香炉灰をほぐして中に空気を含ませておくこと。火のついた香炭を中に埋めるので、空気が足りないと窒息して鎮火してしまうこともあります。
樹脂香を香炉灰に乗せて香りを楽しむ
最後に、熱を帯びた香炉灰の上に樹脂香を乗せ、空中に漂ってきた香りを楽しみます。
上手に楽しむためのコツは、樹脂香を乗せるベストポジションを探ること。
というのも、熱源となる香炭と、樹脂香との距離感が近すぎたりすると、樹脂香が加熱されすぎてボワッと大量の煙が立ち上り、しまいには樹脂香が焦げてしまうこともあります。これではせっかくの良い香りが台無しなので、香炭に被せる絶妙な香炉灰の厚さや、香炭と樹脂香との絶妙な距離感を探り、香りが綺麗に立つポジションを見つけることがとっても大切です。自分にとってはまだまだ難易度高いけど!
また先ほども触れましたが、香炭の上に直接お香を乗せるスタイルも存在しているみたいです。
参考にした情報
*1 https://ja.wikipedia.org/wiki/香 (2024/06/27)
*2 旺文社 国語辞典 第十一版, 2013. 旺文社, 東京, 1695pp.
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