【How to 自家採種】キュウリの種採りをする方法

2024/09/06 2024/11/29 自家採種 自然栽培

はじめに

サイトを見に来てくれたみなさん、こんにちは!
MELIAMANNA(メリアマナ)代表の有吉です。

MELIAMANNAとは、大学院で植物を学んだ代表が”衣食住”に植物を取り入れた暮らしを楽しみ、探求することをテーマとして活動しているサイトです。


今回の記事は、キュウリの種採りをする方法について。

8月のある日、無肥料無農薬栽培の畑をやっている知人の所へ見学に伺った際に、「食べてみてー!」とキュウリ(ときわ地這)を頂きました。さすがは無肥料・無灌水で栽培しているだけあって、その濃厚な美味しさにめちゃくちゃ感動しました。「俺が今まで口にしてきたキュウリは何だったんだろう」「これが本当のキュウリの味なんだろうか」と、今までの常識が覆っちゃうような味。自分も早いところ、こんな野菜を栽培できるようになりたいな。

で、そんな頂いたキュウリですが、そのまま部屋に置いていたらすぐに黄色く熟しちゃったものもあり、せっかくなのでこれを機にキュウリの種採りを実践してみたので、その過程を詳しく解説してみますね。ちなみに見学に行った畑では、自家採種を数年繰り返したキュウリと、購入して播いたばかりのキュウリとでは、前者の方が圧倒的に生育が良好で、自家採取の力をまざまざと見せつけられたのでした。

キュウリから種採りをする手順

1. 果実を完熟させる

はじめに、キュウリの果実を完熟させます。

この目的は、種子を成熟させること。果実および種子が成熟しないまま収穫を行なうと、いくらそのような種子を採って保存し、いくらそのような種子を播いたとしても発芽は期待できません。これは、未成熟の動物に生殖能力が無いのと同じ話ですね。

完熟させる方法は、キュウリの株に果実がなった状態のまま完熟するまで待ちます。僕たちがいつも食べている緑のキュウリは未熟な若い果実なのですが、それを余裕で通り越し、ブクブクとデカくなって黄色く変色したタイミングで収穫するということです。

下の写真は収穫後のものです。キュウリは完熟すると子房室(種子が入っている空間)の境目を示すラインが垂直方向に入るので、これをサインに収穫してもいいでしょう。

2. 種子を取り出す

次に、完熟した果実を割り、種子を取り出します。

子房室の境目を示すラインに沿ってナイフをスパッと。こうすることで、中にある種子を傷つけずに果実を切断することができます。

3. 種子を発酵させる

次に、取り出した種子を発酵させます。

この目的は、発酵させることで種子の周りについている胎座を取り除くこと。この胎座とは、キュウリやメロンをはじめとするウリ科植物の種子の周りに付いているトゥルッとしたやつ、と捉えてもらえればOKです。トマトの種子にも付いてますよね。

発酵させる方法はいくつかあって
・胎座がついた状態の種子をザルに入れ、軽く水を張ったボウルに浸ける。
・同様の状態の種子を、軽く水を張ったビンや皿の中に入れておく。
・同様の状態の種子を、軽く水を入れたジップロックに入れておく。
など。発酵が進めば何でもいいです。

そしてこれらを、夏の常温で1晩~2晩くらい置いておくだけ。発酵が進めば、発酵臭が漂ってくるとともに、胎座がドロドロになって水が濁ってきます。このような状態になれば、種子から胎座が剥がれ落ちていますので、ザルにあげるなどして水で洗えば綺麗な種子を取り出すことができます。あまり長い時間水に浸けていたら発芽してしまうので注意です。

4. 選種 せんしゅ / 水選 すいせん

次に、選種(せんしゅ)を行ないます。

選種とは、中身が詰まっていないなどの質が悪い種子や、混入した異物などを取り除き、質の良い種子のみを選抜する作業のことを指します。

◎ステップ1 成熟した種子と未熟な種子の選別
成熟した種子は硬く、軽く爪で挟んでも折れないのに対し、未熟な種子はまだ柔らかいため、挟むとプチッと折れてしまいます。未熟な種子は発芽が期待できないため、この時点で省きます。

◎ステップ2 水選(すいせん)
成熟した種子の中でも、中身の詰まった質の良い種子と、中身がスカスカで質の悪い種子を重さによって選別します。

水選の方法は、適当な器に水を張り、硬く成熟した種子を投入するだけ。しばらくすると、中身の詰まった質の良い種子は水底へと沈んでいくのに対し、中身がスカスカで質の悪い種子は水面を漂い続けます。1晩くらい置いておけば、全ての種子が選別されるでしょう。キュウリの種子は平たくて浮力がかかりやすいので、質の良い種子でもなかなか沈まない場合がありますが、そんな時は指でツンツンしてみてください。それでも沈まない種子はスカスカなので省きます。また発酵の過程と同様、長い時間水に浸けてしまうと発芽してしまうことがあるので注意です。

5. 乾燥

次に、水選によって選別した種子を乾燥させます。

方法は、風通しの良い日陰で種子を広げて1週間くらい置いておくだけ。日陰ではなく天日干しのスタイルもあるようです。ちゃんと乾燥できればどちらのスタイルでもいいんじゃないかと思います。

乾燥が甘いと、後に種子を保存する際にカビの発生にも繋がりかねないので、しっかりと乾燥させておきましょう。

6. 発芽試験

次に、発芽試験を行ないます。来期の種まきに備えて発芽率を把握しておくための工程ですが、種子を販売するなどしない限り必須ではないので、面倒臭ければ飛ばしてしまっても構いません。

本来であれば、〈インキュベーター〉〈恒温器〉という名の温度管理ができる機械を用いるのがベストなのですが、何せ高額で手が出ないので原始的なアプローチでいきます。

発芽試験に必要なものは以下の3つ。
1. シャーレ・小皿・タッパーなど。
2. 濾紙・脱脂綿・キッチンペーパーなどの発芽床。水分を含むことができれば何でもいいです。
3. 蒸留水。

手順としては、シャーレや小皿に発芽床を敷き詰めて蒸留水で湿らせ、そこにランダムに抽出した種子を並べ、室温で経過を観察します。露地でキュウリが採れるのは気温の高い夏なので、加温せずとも室温で十分に発芽します。それから、例えば〈3日後・6日後・9日後…〉〈7日後・14日後・21日後…〉とかで区切りつつ発芽率を算出すればいいかと思います。発芽率がこれ以上上昇しなくなったらそこで確定と。

今回自家採集に用いたキュウリは1本のみだったので採れた種子が少なく、それらを発芽試験に回す余裕がなかったので、この過程はスキップしました。また来年にでもキュウリの自家採種と発芽試験をすることになれば、その様子を追記しますね。

7. 種子の保存

さいごに、種子を保存します。

方法は、乾燥させた種子を封筒に入れて冷蔵庫の中で保管します。冷所にて保存すると種子は休眠するので、常温で置いておくよりも保存期間を長くすることができます。また封筒には、作物の品種の名前や、種採りをした年月日を記載しておくことを忘れずに。こうした細かい作業は、種子を播こうと冷蔵庫を漁っている未来の自分を必ず助けてくれます。

冷蔵保存した場合におけるマクワウリの種子の寿命は自分の勉強不足でまだ不明なので、信頼のできる情報を手に入れ次第、追記することにしますね!

また長期保存したい場合は冷凍保存するやり方もあるので、そちらが知りたい場合はぜひ本を読んだり、ググったりしてみて下さい!

さいごに。自家採種という行ないについて。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

こんな実践的な知識の詰まった記事をコツコツと積み上げていくことで、いずれはこの場所が、同じような知識を求める者同士の学び場になれたらなと思っています。

僕自身、野生の植物にも各地方の風土に適応した変種が存在したりするように、個々人の畑でも、あるいは近隣のコミュニティでも、自家採種を行ないながら各地域の風土に適応した作物を栽培するのが当たり前だと思っています。ただしそんな当たり前は、その大切さを理解し、行動する人間が居なければ、いとも簡単に風化してしまうもの。

だから、もしもこのような行ないに興味が湧き上がってきた皆様、ぜひ計画を立てて行動に移してみてください! 今すぐに!
そして、このような行ないを既に実践されている皆様、とても厳しい気候の中ですが、気合を入れて継続していきましょうね。

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