もくじ
はじめに
サイトを見に来てくれたみなさん、こんにちは!
MELIAMANNA(メリアマナ)代表の有吉です。
MELIAMANNAとは、大学院で植物を学んだ代表が”衣食住”に植物を取り入れた暮らしを楽しみ、探求することをテーマとして活動しているサイトです。
今回の記事は、マクワウリの種採りをする方法について。
太陽がギラッギラだった8月のある日、無肥料無農薬栽培の畑をやっている知人の所へ見学に伺ったのですが、その際ありがたいことに「タネ採ってみてよ!」と完熟したマクワウリをお土産に頂き、これを機に種採りを実践してみたので、その過程を具体的に解説してみます。
実はこれ、自家採種の方法に関する1本目の記事なのに、マクワウリという何とも言えない立ち位置の作物を主役に置いてしまいましたが、今回紹介する方法は、キュウリやメロンをはじめとするウリ科の作物で広く利用できますので、ぜひご一読を!
マクワウリから種採りをする手順
1. 果実を完熟させる
はじめに、マクワウリの果実を完熟させます。
この目的は、種子を成熟させること。果実および種子が成熟しないまま収穫を行なうと、いくらそのような種子を採って保存し、いくらそのような種子を播いたとしても発芽は期待できません。これは、未成熟な動物に生殖能力が無いのと同じ話ですね。
完熟させる方法は、マクワウリの株に果実がなった状態のまま完熟するまで待ちます。市販のバナナみたいに若くて青い果実を収穫し、それから追熟させるというわけではありません。
下の写真は収穫後のものですが、マクワウリは完熟すると果実に大きくヒビが入るので、自家採種する場合はこれを目安に収穫を行ないます。
2. 種子を取り出す
次に、完熟した果実を割り、種子を取り出します。
中の種子を傷つけないように、垂直方向にナイフをスパッと。
そしてスプーンなどを使って種子を取り出します。僕みたいな、スプーンを取り出すことさえも億劫な面倒臭がり屋さんは、指で掻き出してくださいw
3. 種子を発酵させる
次に、取り出した種子を発酵させます。
この目的は、発酵させることで種子の周りについている胎座を取り除くこと。この胎座とは、メロンやキュウリをはじめとするウリ科植物の種子の周りに付いているトゥルッとしたやつ、と捉えてもらえればOKです。これ、水で洗うだけじゃ取り除きづらいんですよね。
発酵させる方法はいくつかあって
・胎座がついた状態の種子をザルに入れ、軽く水を張ったボウルに浸ける。
・同様の状態の種子を、軽く水を張ったビンや皿の中に入れておく。
・同様の状態の種子を、軽く水を入れたジップロックに入れておく。
など。発酵が進めば何でもいいです。
そしてこれらを、夏の常温で1晩~2晩くらい置いておくだけ。発酵が進めば、発酵臭が漂ってくるとともに、胎座がドロドロになって水が濁ってきます。このような状態になれば、種子から胎座が剥がれ落ちていますので、ザルにあげるなどして水で洗えば綺麗な種子を取り出すことができます。あまり長い時間水に浸けていたら発芽してしまうので注意です。
4. 選種 せんしゅ / 水選 すいせん
次に、選種(せんしゅ)を行ないます。
選種とは、中身が詰まっていないなどの質が悪い種子や、混入した異物などを取り除き、質の良い種子だけを選抜する作業のことを指します。
◎ステップ1 成熟した種子と未熟な種子の選別
成熟した種子は硬く、軽く爪で挟んでも潰れないのに対し、未熟な種子はまだ柔らかいため挟むとプチッと潰れてしまいます。このような、未熟で貧弱な種子は発芽が期待できないため、この時点で省きます。
◎ステップ2 水選(すいせん)
成熟した種子の中でも、中身の詰まった質の良い種子と、中身がスカスカで質の悪い種子を重さによって選別します。
水選の方法は、適当な器に水を張り、硬く成熟した種子を投入するだけ。しばらくすると、中身の詰まった質の良い種子は水底へと沈んでいくのに対し、中身がスカスカで質の悪い種子は水面を漂い続けます。1晩も置いておけば、全ての種子が選別されるでしょうか。マクワウリの種子は平たくて浮力がかかりやすいので、質の良い種子でもなかなか沈まない場合がありますが、そんな時は指でツンツンしてみてください。それでも沈まない種子はスカスカなので省きます。
発酵の過程と同様、長い時間水に浸けてしまうと発芽してしまうことがあるので注意です。ちなみに今回、水から揚げる作業をサボっていたら根っこがニョキニョキと出てきたので、マジで注意しましょうw
5. 乾燥
次に、水選によって選抜した種子を乾燥させます。
方法は、風通しの良い日陰に1週間くらい置いておくだけ。日陰ではなく天日干しのスタイルもあるようです。ちゃんと乾燥できればどちらのスタイルでもいいんじゃないかと思います。
乾燥が甘いと、後に種子を保存する際にカビの発生にも繋がりかねないので、しっかりと乾燥させておきましょう。
6. 発芽試験
次に、発芽試験を行ないます。発芽率を把握するための工程ですが、種子を販売するなどしない限り必須ではないので、面倒臭ければ飛ばしてしまっても構いません。
本来であれば〈インキュベーター〉や〈恒温器〉という名の温度管理ができる機械を用いるのがベストなんですが、何せ高額なので原始的なアプローチでいきます。
発芽試験に必要なものは以下の3つ。
1. シャーレ・小皿・タッパーなど。
2. 濾紙・脱脂綿・キッチンペーパーなどの発芽床。水分を含むことができれば何でもいいです。
3. 蒸留水。
手順としては、シャーレなどに発芽床を敷き詰めて蒸留水で湿らせ、そこにランダムに抽出した種子を並べ、室温で経過を観察します。マクワウリが採れるのは気温の高い夏なので、室温で十分に発芽します。それから、例えば〈3日後・6日後・9日後…〉〈7日後・14日後・21日後…〉とかで区切りつつ発芽率を算出すればいいかと思います。発芽率がこれ以上上昇しなくなったらそこで確定と。
こちら現在試験中なので、発芽率が確定したら追記したいと思います。
7. 種子の保存
さいごに、種子を保存します。
方法は、乾燥させた種子を封筒に入れて冷蔵庫の中で保管します。冷所にて保存すると種子は休眠するので、常温で置いておくよりも保存期間を長くすることができます。また封筒には、作物の品種の名前や、種採りをした年月日を記載しておくことを忘れずに。こうした細かい作業は、種子を播こうと冷蔵庫を漁っている未来の自分を必ず助けてくれます。
冷蔵保存した場合におけるマクワウリの種子の寿命は自分の勉強不足でまだ不明なので、信頼のできる情報を手に入れ次第、追記することにしますね!
また長期保存したい場合は冷凍保存するやり方もあるので、そちらが知りたい場合はぜひ本を読んだり、ググったりしてみて下さい!
さいごに。自家採種という行ないについて。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
本記事は、自家採種の方法を詳しく解説する初めての試みでしたが、いかがだったでしょうか?
こんな実践的な知識の詰まった記事をコツコツと積み上げていくことで、いずれはこの場所が、同じような知識を求める者同士の学び場になれたらなと思っています。
僕自身、野生の植物にも各地方の風土に適応した変種が存在したりするように、個々人の畑でも、あるいは近隣のコミュニティでも、自家採種を行ないながら各地域の風土に適応した固定種の作物を栽培するのが当たり前だと思っています。ただしそんな当たり前は、その大切さを理解し、行動する人間が居なければ、いとも簡単に忘れ去られてしまうもの。
だから、もしもこのような行ないに興味が湧き上がってきた皆様、ぜひ計画を立てて行動に移してみてください! 今すぐに!
そして、このような行ないを既に実践されている皆様、とても厳しい気候の中ですが気合を入れて継続していきましょうね。