はじめに
冒頭の画像が物語っているように、勢い余ってビンいっぱいの塩麹を作っちゃったこともあり、目に入った食材を片っ端から漬けまくる回を開催したのでそのレビューです。野菜中心ですがマジで片っ端から漬けたので、いわゆる漬物にありがちな食材から、物珍しい食材まで。
こうやって、自分の中で新しい〈食〉の可能性を手当たり次第に探っていくのはとても楽しい。好奇心と研究心が大開放されます。
今回使った塩麹のレシピを簡単に書いてみると
1. 材料は米麹・天日塩・水の3点。塩分濃度は約13%。
2. 忘れなければ1日1回攪拌しながら、室温で約1ヶ月間発酵させ、完成後は冷蔵庫で保存。
3. 保存性を高めるための低温殺菌やアルコールの添加は特に行なっていない。
てな感じです。
発酵を進める際の室温に関してですが、個人的には真冬の温度のほうが好きです。なぜなら、塩麹作りの大本命であるニホンコウジカビの活動がゆっくりで発酵が暴れにくいのと、塩麹を腐敗に傾けちゃう菌類が繁殖しにくいと感じるから。じっくりと、だが着実に進んでいく感じがとても良い。春・夏・秋の高めの室温では完成までが早いから、それもそれで良いけれど。
てなわけで、ここからは片っ端から漬けた食材のレビューです。漬ける食材の分量の10%を目安に塩麹を加え、基本的に1晩ほど漬けています。味や食感に加え、塩麹だからこその価値があるか、などの観点でざっくりとレビューしてますが個人の感想すぎるので、実際に皆さんが作ってみて全く違う感想を抱いたとしても「みんなちがって、みんないい」ということで!
【漬け材料】穀物類
初っ端から変化球で、穀物類を塩麹に漬けてみる。
そもそも塩麹の原材料は米麹なので既に米が入っていますが、それから更に米などの穀物類を漬けてみようって発想。純粋な好奇心が実験をしたがっていたので。
というのも、塩麹を作ってくれるニホンコウジカビはアミラーゼ(デンプン分解酵素)を生成することで有名です。なので、デンプンが主成分の穀物類を塩麹に漬けるとデンプンから糖類への分解が進み、口に含んだ瞬間の甘みがいい感じで増すんじゃないかと考えました。あと単純に、穀物の味に塩味がプラスされて美味しそう。
またここで言う〈穀物類〉は、米・麦・トウモロコシといったイネ科作物の種子を指しています。
イネ科 Poaceae
お米 Oryza sativa
〈作り方〉
炊いた玄米を1晩塩麹に漬けた。
〈感想〉
予想通り、とんでもないぐらい甘みが増していた! 普通玄米は、よーーーく咀嚼を重ねると糖類の優しい甘みが感じられるけど、塩麹に漬けた玄米は最初から甘みドカン!みたいな強烈さ。ちゃんとアミラーゼが働いているんだなと体感できて面白かった。
ただし分解が進んでいるぶん食感はドロドロになっていて、玄米特有の噛み応えのある食感は台無しに。米を口の中に2~3時間放り込んでいたらこんな感じでドロドロになるのかな〜みたいなw
なので実験的には面白かったけど、日常で食べようとは思わなかった。

【漬け材料】根菜類
根菜のお漬物といえば塩漬けや糠漬けがド定番ですが、塩麹漬けでこそ輝く存在を発掘できないかな〜とか思いつつ、多種多様な野菜を片っ端から試してみました。
セリ科 Apiaceae
ニンジン Daucus carota subsp. sativus
〈作り方〉
5mm厚に切った生のニンジンを1晩塩麹に漬けた。
〈感想〉
ニンジン特有の香り高さが増幅されている!と感じたのに加えて、ゴボウのような土っぽい香りも出てきていたのが面白かった。けれどニンジン特有の香りは、人によっては青臭さとも取れると思うし、土っぽさは嫌いな人も多いだろうな。あと、普通に生食とか、蒸したりした方が甘味も感じられて好き。
漬物って大きな括りでは普通に美味しいけど、塩漬けでも香りの増幅は感じられるし、塩麹特有の面白さは特に無いと感じた。

アブラナ科 Brassicaceae
キャベツの花茎 Brassica oleracea var. capitata
〈作り方〉
軽く下茹でしたキャベツの花茎を1晩塩麹に漬けた。
〈感想〉
アブラナ科野菜の苦味のある花茎と塩麹、めっちゃマッチするやん!という印象。普段は下茹でしてからキツめの塩胡椒で食べることが多いけど、塩麹漬けにしてお米の風味と合わせるのもこれまた別路線で美味しい。塩胡椒だったらワインが飲みたくなるけど、塩麹漬けだと日本酒が飲みたくなる感じ。ご飯のお供じゃなくて、お酒の相棒にしたいなと思った。
キャベツの花芽を食べる機会なんかそうそう無いから、食材そのもの的にも興味深くて面白い体験をした。

カブ Brassica rapa var. rapa
〈作り方〉
5mm厚に切った生のカブを1晩塩麹に漬けた。
〈感想〉
これが嫌いな日本人は存在しないでしょ。米が一瞬で消える。塩漬けでもカブ特有の香りが引き立てられてめちゃくちゃ美味しいんだけど、引き立てられすぎて稀に辛味が少しきついなと感じることがある。けれど塩麹漬けでは、カブの香りが立ちつつも、辛味は感じられずとてもまろやかで、上手いこと良いとこ取りができている印象。

ダイコン Raphanus sativus var. hortensis
〈作り方〉
5mm厚に切った生のダイコンを1晩塩麹に漬けた。
〈感想〉
これが嫌いな日本人は存在しないでしょ。これまた米が一瞬で消える。パリッとした食感に加えて、大根の甘みや辛味が塩麹の華やかさとマッチして美味しい。これは塩麹漬けならではの輝きがある!

紅芯大根 Raphanus sativus var. hortensis
〈作り方〉
5mm厚に切った生の紅芯大根を1晩塩麹に漬けた。
〈感想〉
どんな錬金術が施されたのか分からんけど、カブみたいな風味になっていた。生食・酢漬け・塩漬けにした時にこんな変化は感じられなかったから、これは塩麹漬けならではの変化じゃないかと予想。
もちろん訳分からんぐらい美味しいし、パリついた食感も良い。普通の大根とは違って見た目の派手さがあるから、食卓が一気に明るくなるな。

【漬け材料】動物性の食材
塩麹を作ってくれるニホンコウジカビは、デンプンを分解するアミラーゼのみならず、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)を生成することでも有名です。つまりは、動物性の食材に多く含まれるタンパク質を分解してくれることで、お肉やお魚がフワフワに柔らかくなったり、アミノ酸が爆裂に増えて旨みが増したりして、ばり美味しくなるということです。塩麹の唐揚げとか美味しいですよね。
ここのセクションではあらゆる動物性の食材を塩麹漬けにして、そんな味や食感の変化を楽しんでいます。
鶏 Gallus gallus domesticus
卵の黄身
〈作り方〉
生卵の黄身を5~6時間塩麹に漬けた。この時間を超えると塩味がキツくなりすぎる印象。
〈感想〉
はいこれ麻薬です。依存症に陥る危険性があります。摂取を取り締まるための法律が可決されてもおかしくありません。
ってぐらい美味しい。塩麹の塩分で脱水された黄身の食感はねっとりとしていて、味はとんでもないぐらい濃厚で複雑に。家から米が消えます。

海鮮
マサバ Scomber japonicus
〈作り方〉
サバの切身を1晩塩麹に漬けてグリルで焼いた。
〈感想〉
普通の塩焼きと比べると旨味が増しているのを感じた。そうそう、これは昆布締めのサバを焼いたときみたいだな。グルタミン酸の旨味みたいな雰囲気を感じた。サバはやっぱり、昆布締め・サバみりん・塩麹漬けみたいな漬け料理でより輝きが増す気がする。
それにタンパク質の分解が進んだからか、強火のグリルで焼いても尚、身がフワッフワで最高だった。まあ焼き加減に関しては、才能な部分もあるかもしれないけど!w
これは余談で、俺は友達と家飲みする時に一緒に料理することが多いんだけど、俺の食材への火の通し加減があまりにも完璧すぎるので、「お前は何でデブじゃないと? その料理自分で食えるならデブになるやろ普通」みたいなことをよく言われるw

スルメイカ Todarodes pacificus
〈作り方〉
生のスルメイカを約3日間塩麹に漬けた。イカはアニサキス予防で1度冷凍した。
〈感想〉
ただのお刺身と比べると、食感はよりトロっとしていて、味も塩麹漬けならではの変化があった(けど言葉でうまく表現できない)。
確かに美味しかったけど、イカの塩辛(こっちはスルメイカのワタも加える)には遠く及ばなかった。ワタを入れて塩辛にしたら120点の味になること間違いなしだから、今後再チャレンジだな!

本記事は作成途中です。今後とも実験の結果を蓄積していきます。