自然暦を取り入れた作物栽培の実践に必要な知恵の集積を目指してみる。

2025/05/23 2025/05/29

この記事を書いた人

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有吉 諒真(ありよし りょうま)

福岡生まれ福岡在住。大学時代を過ごした沖縄にて植物の世界に魅了され、植物学で修士号を取得。現在は"衣食住"に植物を取り入れた暮らしを楽しみ、探求することを目的に活動中。

特殊な農業生態学的区域に関する詳細な認識に加えて、伝統的な農民たちは季節的およびその他の区切りとなる変化に対して驚くほどの知識を示す。

『民族植物学 ー原理と応用ー』

はじめに

異常気象な昨今、ただカレンダー上の数字だけを眺めながら農作業の時機を見計らうのはかなり難しいように感じています。例えそれが、二十四節気をはじめとする先人たちが繋いできた大切な暦だとしても。

特に秋冬野菜のタネなんか、これまでの慣習通り9月に播くわけにはいかないですもん。気温が高すぎるし、虫の活動はまだまだ活発すぎるしで、ほぼ確で失敗する。

しかしこんな中でも、自然暦はこれまで通り信用していいんじゃないかと個人的には思っていて。いや、言葉が弱いか。これまで以上に参考にするべきだと思っています。

自然暦を端的に説明すると、それは「梅の開花に合わせて春のジャガイモを植える」みたいな、自然現象に則った作物の栽培暦のことです。当たり前ですが、梅は毎年決まった日付で開花するわけではなく、気温や日長などといった環境のシグナルを受け取ることで開花の日付が決まり、それは毎年変動します。なのでカレンダー上の数字よりも、こうした環境のシグナルに敏感な動植物たちの様子を観察し参考にする方が、作物栽培の適期をより正確に掴めるんじゃないかと考えました。もちろん、二十四節気などもめっちゃ参考にしながらですが。

この記事の背景と目的

自然暦について深掘りするべく、冒頭でも引用した『民族植物学 ー原理と応用ー』を読み込んでみます。

C.M.コットン(2004) は、南米において狩猟、漁撈、採集、焼畑耕作を組み合わせた経済生活を営むデサナ族は、植物の動態(特定の種の開花もしくは結実)、その他特徴的な生物学的あるいは環境的要素(例えば、魚の産卵・シロアリが飛び始める・氾濫を引き起こすほどの非常に強い雨など)といった、一連の非常に複雑な季節の指標をもとに、経済活動に際して生産性を最高に高め、整体的に持続可能な状態にする時期を正確に見定めることができる、としています。

具体例を抜粋すると、太陽暦5月頃、氾濫を引き起こすほどの非常に強い雨が降れば、短期および常設の魚捕りの罠を仕掛ける・下生えを除いてトウモロコシの作付けにそなえる、といった感じです(C.M.コットン 2004)

そしてこのセクションを読んだ時、日本でもこれを目指したいと思った。目指さなきゃと強烈に思った。


ということで本記事では、日本における自然暦に関する知恵の集積を目指してみることにします。

これを目指す場合に障壁となるのは
・日本にも自然暦は多く存在していると推測されるが、情報が1ヶ所にまとまっておらず、うまく拾えていない。
・情報がコミュニティ内で閉ざされており、広く共有されていない。
だと考えました。

そこで本記事では、これらの障壁に対する解決策を
・文献やYouTubeなどで公開されている情報源をもとにして、散在する自然暦を1ヶ所に集約する。
・聞き取り調査などにより、日本各地の作物栽培に携わる人々から情報を集める(当然ながら、各コミュニティが守りたい情報は絶対に公にしない)。
として、日本における自然暦に関する知恵の集積を目指します。

集積する情報の条件としては
・日本国内であれば地域は問わない(自然暦の元となる動植物相や自然現象と、栽培作物とが一致すれば、各地で応用できると考える)。
・現段階では優先して、作物栽培に関する自然暦の集積を目指す(特に、播き時や植え付け時期に関する自然暦の情報)。
とします。

日本における作物栽培に関する自然暦

以下、現時点で集めた自然暦に関する情報です。
おおよそ立春(2月3日から2月4日ごろ)を起点に自然暦を並べています。
筆者は自然暦に沿った種子の播き時に最も関心があるので、まずはその情報を優先して収集しています。
本記事はあくまでも情報の集積が目的なので、これらを参考にして実際に栽培が上手くいくかどうかは、探究心を持って実験していく必要があると考えます。

自然暦行なう作業出典
梅の開花ジャガイモの定植久保田 2016
新版 暦に学ぶ野菜づくりの知恵 畑仕事の十二カ月
椿の開花ジャガイモの定植
樒(シキミ)の開花ジャガイモの定植
連翹(レンギョウ)の開花ニンジン・ダイコン・コマツナの播種
沈丁花の開花ジャガイモの定植
ニンジン・ダイコン・コマツナの播種
辛夷(コブシ)の開花ジャガイモの定植
ネギ・ゴボウ・ミツバ・コカブ・ラディッシュ・ホウレンソウの播種
木瓜(ボケ)の開花ネギ・ゴボウ・ミツバ・コカブ・ラディッシュ・ホウレンソウ・スイカ・キュウリ・カボチャ・シソの播種
サトイモ・ネギの定植
桜の開花スイカ・キュウリ・カボチャ・シソの播種
サトイモ・ネギの定植
桃の開花スイカ・キュウリ・カボチャ・シソの播種
サトイモ・ネギの定植
春に展葉した柿の葉が、横に3粒並べたインゲンマメをくるりと包める大きさになる。つるありインゲンの播種島の自然農園(YouTube)
【自然農】今が播き時!インゲン豆 種の播き方・育て方  2023年4月10日【natural farming】
藤の開花ゴーヤー・ラッカセイ・オクラ・モロヘイヤ・ナス・トマト・メロン・スイカ・キュウリ・カボチャの播種久保田 2016
新版 暦に学ぶ野菜づくりの知恵 畑仕事の十二カ月
芍薬(シャクヤク)の開花ゴーヤー・ラッカセイ・オクラ・モロヘイヤ・ナス・トマト・メロン・スイカ・キュウリ・カボチャの播種
牡丹(ボタン)の開花ゴーヤー・ラッカセイ・オクラ・モロヘイヤ・ナス・トマト・メロン・スイカ・キュウリ・カボチャの播種
躑躅(ツツジ)の開花サツマイモのツルを定植
ゴマの播種
アヤメの開花サツマイモのツルを定植
ゴマの播種
ショウブの開花ダイズ・ニンジン・アズキの播種
朝顔の開花ニンジン・キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・ネギの播種
白粉花(オシロイバナ)の開花ニンジン・ハクサイ・ワケギ・ソバ・レタスの播種
鶏頭(ケイトウ)の開花ニンジン・ハクサイ・ワケギ・ソバ・レタスの播種
萩(ハギ)の開花ダイコン・ホウレンソウ・タマネギの播種
コスモスの開花ダイコン・ホウレンソウ・タマネギの播種
菊(キク)の開花コマツナ・ホウレンソウの播種
イチゴの定植
ダリアの開花コマツナ・ホウレンソウの播種
イチゴの定植
金木犀の開花ネギ・ゴボウ・ミツバの播種(秋播き)
彼岸花の開花ネギ・ゴボウ・ミツバの播種(秋播き)
楓(カエデ)の紅葉エンドウマメ・ソラマメ・ムギの播種
タマネギの定植
アスパラガスの株分け
山茶花(サザンカ)の開花エンドウマメ・ソラマメ・ムギの播種
タマネギの定植
アスパラガスの株分け
本記事は執筆途中です。自然暦に関する情報を得たら、その都度追記していきます。

参考にした文献

C.M.コットン, “民族植物学 ー原理と応用ー”, 八坂書房, 東京, 416pp, 2004.

久保田豊和, “新版 暦に学ぶ野菜づくりの知恵 畑仕事の十二カ月” , 一般社団法人 家の光協会, 東京, 183pp, 2016.

旧暦、二十四節季、農書、百姓伝記など、昔から伝わる畑仕事の知恵を現代に生かせるようまとめた一冊。 旧暦を読み解き、畑や野菜の持つ力を引き出す、自然に寄り添う暮らしのすすめ。
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