『植物は〈知性〉をもっている』を読んで

2023/05/19 2024/11/02

はじめに

サイトを見にきてくれたみなさま、こんにちは!
MELIAMANNA(メリアマナ)代表の有吉です。

MELIAMANNAとは、大学院で植物学について学んだ代表が”衣食住”に植物を取り入れた暮らしを追求すことをテーマとして
2023年に立ち上げたサイトです。


今回の記事では、最近読んだ『植物は〈知性〉をもっている』という本の内容が
とても興味深くて面白かったので、読書感想文みたいなカタチで紹介してみたいと思います。

私実は、趣味を聞かれたらまず最初に「読書!」と答えるぐらいには本が大好きでして。
読むペースはゆっくりですが、作業机の上には、常に何か読んでいる本が積んであります。

読んでいるジャンルも本当に色々で、小説・科学書・哲学書から漫画・雑誌まで
興味が湧いたものはなんでもすぐに手を出します。

そんな色々なレパートリーの中にはもちろん植物にまつわる本も沢山ありまして
「こうして植物のサイトをやっているから、植物にまつわる本はどんどん紹介しよう」
という当然の成り行きになったので、植物好きの皆さまへ向けて読書感想文書きます!

これを読んで、少しでも植物への興味が増すきっかけになったり
ご自身でも植物の本を買って読んでみるきっかけになったりすれば
とーーっても嬉しいです!

堅苦しい要約ではなく、小難しい解説でもなく、”ただの読んでみた感想”なので
「ふ〜ん、こんな本もあるんだなあ」「その内容面白そうだなあ!」と
気楽に適当に覗いてみてください〜。

今回紹介する『植物は〈知性〉をもっている』は
専門用語をできるだけ抑えつつ、植物の面白さを上手く伝えてあったので
植物に興味が出てきた初心者さんにも是非読んで欲しいと思える内容でしたよ〜。

では、『植物は〈知性〉をもっている』の読書感想文スタートです!

読んでみた感想

さて、『植物は〈知性〉をもっている』についてですが、これは
イタリアの植物学者の方と、フランスの科学ジャーナリストの方が共著で書いている本で
植物が生きるために持っている様々な生態を”植物の知性”として紹介していく内容です。

はじめに本屋さんで見かけた時に、「植物」「知性」という
なかなか珍しい言葉の組み合わせを使ったタイトルが面白くて一瞬で惹かれてしまいました。

植物が動物と異なる所と言えば”生まれた場所から動けない”という所ですが
そんな圧倒的ディスアドバンテージを持ちつつも
ありとあらゆる方法を使いながら植物が環境に適応していく様子が描かれています。

それは例えば、こんなもの。
・人間は5つの感覚(視覚・嗅覚・味覚・聴覚・触覚)を持っているが
 植物は上の5つを含めた合計20もの感覚を持っている!
・植物は自分の親族を見分けることができて
 さらには親族同士でコミュニケーションをとることができる!
・植物は動物ともコミュニケーションをとっていて
 それにより花粉を運んでもらったり、天敵を駆除してもらっている!
 
なんだか、今までの植物に対するイメージがまるっきり変わっちゃいそうでしょ?

この本を読んで植物に対する理解が深まると
今までよりも植物を見る目が変わり、植物のことをより好きになれる気がしますよ〜。
「え!?君らは人間が気づかない間にそんなことまでしているの!?」とね。
後ほど、この本で私が特に面白いと思った箇所を詳しく紹介しますね。


それで、ですよ。。。
この本、他とは違ってめちゃくちゃ面白いところがあるんですよね。

それは、この本を買ってページをめくってみると
まずはどうやら筆者が軽くブチギレているんですww。
優秀な頭脳をフル回転させ、色んな言語表現を用いながらブチギレているとww。

というのも筆者はどうやら
今までの歴史、そして現在に至るまでに、植物がぞんざいな扱いを受けてきたことに対して
軽くブチギレているらしいのです。

例えば序文では

植物について考えようとしても、大半の人は、「口が聴けず動きもしない、私たちの世界の調度品」にすぎないと思うことだろう。役に立ち、総じて魅力的ではあるが、しょせん地球上の生物の国の二級市民にすぎないとみなしているのだ。

マイケル・ポーラン『植物は〈知性〉をもっている』序文より

みたいな調子な訳ですw。
よくもまあこんな言い回し思いつきますよねw

ですが、、まあ、、私もこの気持ちは分からなくはないですけどね…。

筆者も同じような事をこの本の中に書いていますが
植物は石や岩のちょっと上ぐらいの存在だと思われてるのかなあ…
植物は生き物と思われていないのかなあ…ただのモノだと思われてるのかなあ…
なんてことが時たまに…いや、しょっちゅう!?あるわけです。

例えばね、これは近所のハーブ苗屋さんと喋ってる時に聞いたお話ですが
ある年の1月か2月ぐらい、つまりは冬真っ只中の時期に、あるお客さんが
「露地植え用にハーブを買いたい」と言いいながらお店にやってきたらしいのです。
そのお客さんが何を思い霜降る真冬に露地植えを始めたかったのかは謎ですけど
ハーブ苗屋の店主さんは
「植物は生き物だから成長のサイクルがあってね…」
「冬は基本的に成長が止まってるからいきなり植えるのは植物にとってストレスで…」
「成長のサイクルが始まる春まで待ってから買いに来て…お願い…」
という風に説得して説得して次の春まで購入を待ってもらったことがあるそう。

とまあ、これも植物が石や岩のちょっと上ぐらいの存在だと思われてる場面のひとつですかね…。

けど、こうして失敗しながら知識を得ることで、植物に対する見方が良い方向に変わったり
自然のサイクルを意識しながら生活できるようになったりするものですね。

けれど、この本の筆者のブチギレはこんな所では止まりません。
これまでの植物に関する研究に対してもブチギレているのです。

せっかく植物に関して革新的な発見がなされても、”植物だから”という理由で
詳しく研究されずに無視されてきた、だとか。
”植物よりも動物の方が知的に上に立っている”みたいな潜在意識のせいで
動物の研究の方が優先されてきた、だとか。

こんな不満が溜まりに溜まりまくっているせいで
この後、植物が持つとても面白い生態を紹介する時に
ほんとうにクドいぐらいの植物スゴいぜアピールをするのですww。

あまりにもひたむきに植物の凄さをアピールしているもんで、読んでいる途中に
「うんうん今まで植物の凄さが認められなくて辛かったんだね」
と頭をヨシヨシしてあげたい気持ちになってしまいます。

だがしかし、その植物スゴいぜアピールの内容ときたら本当に興味深いものばかりで
これからは個人的に面白かった植物のスゴさいくつか紹介してみたいと思います。


個人的におもしろかった内容

植物が身近にあるだけで本能的にリラックスする

この本の目玉である、植物の知性とは少し離れた内容ですが
この本の中で個人的にいちばん面白いと思ったのがこの内容です!

植物が近くに存在しているだけで、本能的にリラックスしてストレスが減ったり
集中力が増加したり、更には病気の治癒力までも増加するのではないか、というハナシ。

日本には”森林浴”という言葉があるように、森の中でも、ちょっとした広場でも
自然の中に飛び込んだ瞬間、心身ともにリラックスできることはよく知られています。
また、お部屋の中の観葉植物をボケーーっと眺めている瞬間や
庭に植えた野菜の苗が成長していく瞬間、庭に植えた木に花が咲いた瞬間などに
なんだか本能的にリラックスし、喜びが湧いてきたことは誰しも経験があると思います。

そんな、感覚的でしかないような体験を解明しようと現在研究が行なわれていて
その結果、”植物が身近にあるとリラックスする”という現象は
どうやら実際に起こっていることらしいのです。

本の中で紹介されていた研究をいくつか引用してみます。

・窓から豊かな緑が見える病室で過ごしている入院患者は、建物や空き地しか見えないような病室の患者に比べて、必要とする鎮痛剤の量が少なくてすみ、ずっと短期間で退院することができた。
・窓から緑の見える部屋の学生は(試験で)明らかにいい結果が出たのに対し、建物しか見えない学生の結果は満足のいくものではなかった。
・木々の立ち並ぶ道路では事故が少なく、緑の豊かな地区では自殺や暴力犯罪が少ないこともわかった。

ステファノ マンクーゾ・アレッサンドラ ヴィオラ『植物は〈知性〉をもっている』

という感じで、近くに植物がある環境に身を置き、またそのような環境を作り出すことで
病気の治癒力が増加する、集中力が増加する、優しく穏やかな心が育つ
などといったメリットがありそうです。

とは言っても、植物の存在が人間の心身に及ぼす影響については
まだまだ研究が進んでいない、というのが現状なようです。
何だか良い影響があることは確認されているけれど
それがどういったメカニズムで起こるかはまだまだ不明であると。

しかし!!植物と共にある暮らしを提案している身として
植物が人間の心身に及ぼす影響はとても興味深いですし
それが病気の治癒や健康なメンタルの形成にまで影響するとなれば
より多くの人に植物に関心を持ってもらい
より多くの植物空間を創り出していくことが
人生の使命とも言えるでしょう!!

そこで、MELIAMANNAでは今後とも
植物が人間の心身に及ぼす影響について最新の情報を追い
私が学んだことを皆さんにどんどん共有していこうと思います。

ぜひ今後とも情報をチェックしていてくださいね!

自然の中に飛び込んで、本能的にリラックスした経験は誰しもあるはず

植物に音楽を聞かせると成長に良い影響がある

続いて興味深かったのは、植物がもつ20もの感覚のうち、聴覚に関するもの。

植物は耳なんか持っていないのに、聴覚!?と思いますが
人間は空気の振動を音として耳で捉えるところを
植物は土の振動を音として、それを全身の細胞にある
機械受容チャネルというもので捉えているそう。

なるほど、人間が音を聞くのとアプローチの方法が違うだけで
植物も地球にこだまするありとあらゆる音を捉えているのかもしれませんね。
それを聞いて何が起こるのか、そして植物が何を思うのか?
については、まだまだ謎が多そうですが…。

そして、本当に面白いと思ったのはここから。

植物が音を聞いたときに何が起こるかはまだまだ謎が多そう
と書きましたが、少しずつ分かってきていることもあるようで…。

・音楽が流されるなかで育ったブドウは、まったく音楽を流さずに育てられたブドウよりも生育状態がよかったのだ。
・それだけではない、成熟が早いうえに、味、色、ポリフェノールの含有量の点で優れたブドウを実らせた。
・おまけに、音楽には害虫を混乱させ、木から遠ざける効果もあった。
・じつは、植物の成長に影響を及ぼしているのは音楽のジャンルではなく、音楽を構成する音の周波数なのだ。ある一定の周波数、とくに低周波(100~500ヘルツの音)が、種子の発芽、植物の成長、根の伸長にいい影響を与える。

ステファノ マンクーゾ・アレッサンドラ ヴィオラ『植物は〈知性〉をもっている』

ということがわかってきているそう。

ブドウにある一定の周波数の音を聞かせながら育てると
より健康に育ち、できたブドウも美味かった、ということですね。
そして、音であればなんでも良いというわけではなく
植物の成長や発芽にとっては、100~500Hzという低周波が適していると。

どうやら、植物は本当に音を聞き分けているみたいですね…。
さも、人間が他人の声質を聞き分けて
「この人の声は好きで落ち着く! けどこの人の声は受け付けないなあ…」
と言ってるみたいで、ほんとうに興味深い。

それに、もし音が植物に影響を及ぼすメカニズムが解明されれば
観葉植物の調子が良くない時に低周波の音を聴かせてあげる、だとか
植物の生産者さんが音を聴かせてより効率的に生産する、だとか
そんな世界もやってくるのかもしれませんね。

こちらも、これから研究が進んでいくのに期待です!

ヘッドフォンで…とはいかないが、植物も音を認識することができる

植物は親族同士でコミュニケーションをとれる

そしてこれが、最後に紹介する内容になります。

それは、植物は自然の中で周囲に何百本、何千本と木々がある中で
親族を区別することができ、更には親族同士でコミュニケーションができるというもの。

なんと!喋る能力が無いのにコミュニケーション!?となりますが
よくよく考えると、動物のコミュニケーションの方法は喋ることだけじゃないんです。
コミュニケーションをとる方法として、例えば人間は
言葉に加え、身振り、表情、スキンシップなどありとあらゆる方法を使いますね。

それに対して、植物は動物の方法とは少々違うアプローチですが
空気中に化合物を発散させる、触れ合う、根を通して化学物質をやりとりする
などといった植物独自の方法でコミュニケーションをとるんだそうです。

この話題に関してひとつ面白い研究が紹介されていました。
30個の種子が入った容器を2つ用意します。
そのうち1つの容器には全て異なる種類の植物の種子が30個。
もう1つの容器には全て同じ種類の植物の種子が30個。
そして種子が発芽して、植物が成長する様子を観察したらどうなるか?というもの。

みなさん、結果はどうなったと思いますか?

それはね、、、
違う種類の種子が入った容器では
それぞれがテリトリーや、水・栄養などの資源を独占しようと無数の根を伸ばしたのに対し
同じ種類の種子が入った容器では
伸びた根の数が圧倒的に少なく、より地上部分の成長にエネルギーを注いだんだそう。

つまり、周りに他人だけがいたら、他人の資源を力づくで奪って自分だけが勝ち残ろうとして
逆に周りに親族がいたら、みなで資源を分け合い、協力して生き残ろうとする、ということ。

このことから、植物は親族を区別しコミュニケーションをとることで
植物のどの部分をどのくらい成長させるか、といった振る舞いを変えられることがわかります。

動物に全く引けを取らないくらいの精度でコミュニケーションをとり
動物の群れと同じ容量で、植物も親族同士で協力し合って
厳しい自然の中を生き抜いているのかもしれませんね。

この話を読んで、園芸の世界に身を置く私的には
「普通、1つの鉢に1つの植物を植えるけど、同じ種類を2つ植えたほうが良いのか?」
「多肉植物などは寄せ植えをすることが多いけど、違う種類同士だと成長に悪いのか?」
など、今まで考えてもみなかったようなことが頭の中をグルグルと駆け巡っていました。

悲しいかな、今はこんなこと考えたところですぐに答えは出ませんが
ここからずーーっと先まで学びの旅が続いていくことは確かなようです。

うん、だからこの世界は面白い!!

表紙の一部。植物は根を使ってコミュニケーションをとることができる。

まとめ

さて、今回は『植物は〈知性〉をもっている』の読書感想文を書いてみましたが
いかがだったでしょうか?

軽い気持ちで書き始めたのですが、かなりのボリュームになってしまいましたw。

この読書感想文をきっかけに、植物おもしろい!!と思ってくれる人が増えたり
家の植物、知らない間にこんなこともしてるのね、と思うきっかけになってくれたら
とてもとても嬉しいです!

そしてこの本には、ここでは紹介しきれないほどの
面白い植物の生態がたくさん載っていますので
興味が湧いた方は、ぜひ本を手に取って読んでみてください!

ではまた植物に関する面白い本があれば紹介してみたいと思いますので
次回もお楽しみに〜!


本の情報

ステファノ マンクーゾ・アレッサンドラ ヴィオラ, 2015. 植物は〈知性〉をもっている. NHK出版, 東京, 211pp.

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