もくじ
はじめに
サイトを見に来てくれたみなさん、こんにちは!
MELIAMANNA(メリアマナ)代表の有吉です。
MELIAMANNAとは、大学院で植物学について学んだ代表が
”衣食住”に植物を取り入れた暮らしを楽しみ、追求することをテーマとして活動しているサイトです。
今回の記事の主役は、斑入りヤブコウジの盆栽とホソバオキナゴケ。
僕が2023年の夏頃から育てている、斑入りヤブコウジの盆栽。風流があってとてもお気に入りの盆栽なのですが、色々あって土をこんもりと盛り上げて植え込む必要があったせいで、上からバシャバシャと水やりすると、土がコロコロと鉢からこぼれていってしまうのが難点でした。バケツに水を張って、そこに鉢を浸けて水やりすれば土はこぼれないですが、何せめんどくさい…。
ということで今回は、このような土こぼれを防止し、上からバシャッと水やりできるようにするために、盆栽の表土にホソバオキナゴケを張ってみたのでその様子を紹介します。
その結果は、水を勢いよくかけても土がこぼれなくなったのはもちろん、コケの青さも同時に鑑賞できたり、ヤブコウジは古木かなと思ってしまうような雰囲気を一気に身に纏ったりと、良いポイントが盛りだくさんでした。
本記事ではさらに、僕がたまたま盆栽屋さんから教えてもらった、コケを綺麗に張るための工夫についても紹介していますので、ぜひ目を通してみてくださいね。
ヤブコウジの盆栽にホソバオキナゴケを張る
水やりの時に土がこぼれてしまうヤブコウジの盆栽
2023年の夏頃、立ち寄った八百屋で数百円の苗を見つけたのをきっかけに、斑入りヤブコウジを育て始めました。葉に少々枯れている部分が見られますが、葉色は鮮やかで、新芽がぐんぐんと伸びてきていて、調子はとっても良さそう。ヤブコウジは「和的で渋い」の一言に尽きます。
ただしひとつ問題があって、、、植え込みの際に用意した盆栽鉢がちょいと小さかったみたいで、ヤブコウジの地下茎を土で埋めるためには、土をこんもりと盛り上げなければなりませんでした。そのせいで、じょうろで上からバシャバシャと水やりすると、赤玉や鹿沼といった土たちががコロコロコロコロコロコロと鉢からこぼれていってしまうのに悩まされることに。バケツに水を張って、そこに鉢を浸けて水やりすれば土はこぼれないですが、何せめんどくさい…。
ということで、来春にもう少し大きめの鉢に植えかるか、それとも表土にコケでも張ってみるかなー、なんてことを考えていました。
ちょっと分かりにくいけど、土を盛り上げているため溢れやすい
ホソバオキナゴケについて簡単に
そんな中、ポップアップで偶然見かけた盆栽屋さんにこのことを相談してみると「それなら山苔(やまごけ)張ってみて!!!」とアドバイスしていただきました。そして偶然にも山苔を持ってきていらっしゃっていたので、安くお譲りしていただくことに。感謝してもしきれません。
ちなみにここで出てきた「山苔」というのは、「細葉翁苔(ホソバオキナゴケ)」と「粗葉白髪苔(アラハシラガゴケ)」の総称のこと。どちらも森林や境内の日陰環境でよく生育しています。地表に近く適度な湿り気はあるけれど、通気性や排水性はよくて水は溜まらない場所、みたいな印象。山登りなんかしてると、杉の木の根元に張り付いている様子をよく見かけますね。
盆栽屋さんから購入した山苔を家に持ち帰って、葉身の様子をルーペで観察してみると、今回のやつはどうやらホソバオキナゴケのよう。
ホソバオキナゴケは、葉身が短く、シャキッと真っ直ぐで、長さが揃っているイメージ。
反してアラハシラガゴケは、葉身が長く、少しだらんとしなっていて、長さが不均一なイメージ。
無事に伝わったら幸いです!!!
ホソバオキナゴケを綺麗に張るための工夫
こうして綺麗なホソバオキナゴケを運良く手に入れることができたので、早速盆栽の表土に張っていくことに。
苔を張る際には、手に入れたコケをそのまま土の上にポンと乗せるだけ、、、
というわけにはいかず、上手く張り付けるためには、とある下準備をしておいた方がベターです。
それは、茶色に変色した古い部分を切り取っておくこと。ハサミでもなんでもいいので、このような部分を予め取り除いておきます。
こうすることで、残した緑色の部分で光合成を行ないつつ、コケが体を支えるための仮根をそこから新たに伸ばしていくため、コケがしっかりと土に張り付いていくことができます。また仮根が伸びて土に活着すれば、スピードはゆっくりなものの、新芽を出してコロニーを広げていってくれます。
1: 切り取る前 2: 切り取った後
茶色に変色した部分を切り取ったところで、いよいよホソバオキナゴケを張りつける工程に入ります。
綺麗に張るためにはここでもひと工夫必要で、それは苔の上から爪楊枝をブスっと差し込むこと。
というのも、ホソバオキナゴケは別名「饅頭苔(まんじゅうごけ)」とも呼ばれており、その名の通りコロニーがこんもりと丸まったドーム型をしています。しかし丸まっていてコロニーの中央が浮き上がっているせいで、平らな土の上に置いてもコロニーが土に密着できず、仮根を伸ばしていくことができないため、綺麗に張り付けることができません。
そこで、爪楊枝の登場。
苔を土の上に置き、コロニーが浮き上がっている所に上から爪楊枝をブスっっっと差し込めば、コロニー全体が土にピシッと密着し、綺麗に張り付けることができます。すごくシンプルな工夫なんですが、美しい鉢を創り上げるには、こういう細かい心遣いが大事だったりしますよねー。
1: 爪楊枝を… 2: 差し込む!!!
ホソバオキナゴケを張ったヤブコウジの盆栽が完成!
こうして細かい工夫を重ねながら、斑入りヤブコウジの盆栽へのホソバオキナゴケの張り付け作業が完了!
一番よかったのはやはり、水をジャバジャバと勢いよくかけても土がこぼれなくなったこと。毎日の水やりの時にいちいち土が溢れてきたり、それを防ぐためにバケツに水を張って鉢を浸けたり、、、というのは個人的にとっっっても面倒臭かったので、水やりが楽ちんになりました。
他にもよかった点は、コケの青さも同時に鑑賞できるようになり、またヤブコウジは古木かなと思ってしまうような雰囲気を身に纏い出したこと。日本庭園や盆栽において苔や岩を景色作りのために活用するのは、苔や岩というのは古色蒼然、あるいは寂びの象徴だからだ、と言われているのをどこかで見かけたことがあります。たしかによくよく考えてみると、例えば山中で見かける大岩なんて名前も辿れないようなご先祖様の頃からその場所に屹立し続けているんだろうし、苔に関しては成長が遅い種も多く、わっっっと感動するような壮大なコロニーが形成されるまでにはとても長い時間がかかったりします。永続的な時間を自然環境と共に過ごしてきた人類は、そんな苔むした景観の中に悠久の美を見出すようにできているのでしょう。今回僕が新たに苔を張ったヤブコウジの盆栽から、古木とも思えるようなオーラを受け取ったのには、自分の中にも存在する、そのようなプリミティブな部分が源泉となっているんじゃないかと思いました。
カイガラムシが付いていたのでちょっと剪定
おまけですが、作業ついでにヤブコウジの葉をよく観察すると、裏にカイガラムシらしき物体がびっしりと付いていた若葉が2枚だけあったので、その剪定をしておきました。葉は剪定せずに、ティッシュかなんかでカイガラムシを取り除こうかなーとも考えたけれど、あまりにも、あまりにもびっしりとこびり付いていたので、もう葉っぱへのダメージが大きいだろうと考えて剪定しておくことに。薬剤が今は手元に無いのですが、ちびカイガラムシがどこかに潜んでいると近いうちに二の足を踏むので、購入して薬剤散布しておこうかなと思います。
さいごに
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今回初めて盆栽の苔張りに挑戦してみましたが、鉢から土がこぼれなくなるという機能的な効果に加え、侘びの雰囲気を醸し出す美的な効果も大いにあるということを、身をもって実感できました。
苔の張り付け作業に関しては、30分もあれば綺麗にできると思うので、みなさんもどんどん挑戦してみてくださいね。
また、今回の記事でせっかくヤブコウジとホソバオキナゴケを取り扱ったので、これを機に、これら2種を美しい姿に育て上げるコツに関する記事も近々書いてみようと思います。そちらも是非チェックを!
ではまた次回の記事で!
ヤブコウジの育て方に関する記事
近日公開します!
ホソバオキナゴケの育て方に関する記事
近日公開します!